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2013.06.14

「水滸伝」 第09話「大いに野猪林を騒がす」

 並行して林冲と魯智深の物語が描かれてきたドラマ版「水滸伝」。ようやく(?)林冲も流刑されることとなり…って、まだ林冲と魯智深が出会っていないのですが!? と思いきや、ある意味意外な形で二人は出会うこととなります。

 高キュウらの罠にはまり、死罪は免れたものの、北方(ほっぽう)の滄州に流刑されることとなった林冲。流刑地に出発する際に、町の人たちが見送りに来るのが彼の人望だと思いますが、林冲はその前で妻との離縁を宣言することになります。
 この辺り、自分のために妻を縛っておくことはできない、といういかにも林冲らしい生真面目さですが、それに悲しみつつも、最後に、バカのおかげで途中で終わった寺詣りの続きをしたいと願う奥方がいじらしい。

 そして、妻が一心に祈りを捧げる間に、静かに旅立つ林冲。もちろん奥方もそれをわかって、あえて背中を向けて祈っているわけですが、声なき慟哭の演技など見て、ああアニタ・ユン良い役者になったなあと思いつつしんみりしていたのですが…

 都を出る途中、林冲一行が通りかかったのが、魯智深の菜園前。折しもそこでは魯智深が破落戸相手に演武の真っ最中――と、それを目を爛々と耀かせて見つめ、興奮して声をかける林冲…ってあんた何やってんの!
 いや、あなた数分前まで、涙ながらに妻との別れを惜しんでいたのに、ちょっとすごい演武を見たらいきなりテンション上げてこの態度。しかも立ち会いまで望むとは、何たる武術バカぶりか…
 護送役人も当惑しておりましたが、こちらはむしろドン引きであります。

 とはいえ、ようやく出会った林冲と魯智深。原典では林冲が受難する前に出会い、親交を深めていた二人ですが、しかしこのドラマではこの場面が初対面。しかし、男と男の熱い魂が結びつくのに時間はいらぬ! とばかりにいきなり意気投合して(もっとも、二人は智真長老の兄弟弟子という前フリはあったわけですが)義兄弟になってしまうのは、実に武侠らしくてこれはこれでなかなかよろしいと思います。

 さて、魯智深に妻のことを頼んでようやく流刑の旅に出る林冲ですが、原典通り役人に熱湯コマーシャルさせられるなど散々いたぶられてすっかり弱った挙げ句、野猪林であわや命を奪われかけて…と、そこに颯爽と駆けつけるのはもちろん魯智深!
 お前、林冲の奥さんのことはどうしたと突っ込みたくもなりますが(というか林冲も突っ込んだ)、しかしこれはこれでなかなかに胸の空くような展開。それもそのはず、大昔から講談や舞台で長い間愛されてきた名場面なのですから…

 それはさておき、本作の魯智深は友達が少ないメルヘン坊主の分、気に入った相手には一途極まりない男。散々役人をぶちのめした後に強引に旅に同行してくるのには林冲も当惑を隠せませんが…というわけで次回に続きます。


 本来であれば2話分取り上げるつもりが、あまりの林冲の武術バカっぷりと魯智深のストーキングに驚いて1話分しか取り上げられませんでした…


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