「水滸伝」第10話 「林冲 棒を持ち洪師範を打つ」
流刑の旅に出る直前、魯智深と熱い義兄弟の契りを交わした林冲。陸謙に意を含められた護送役人にあわや殺されかけたところを魯智深に救われた林冲は、滄州で新たな運命の出会いを経験することとなります。
帰れ帰れと言っても子犬のようなオーラで旅についてくる魯智深に辟易としつつ(というか妻のことを守るのはどうなったんだと思いつつ)ようやく滄州に辿り着いた林冲は、ようやく魯智深と別れ、牢城に入るのですが…ここで有り金ほとんど牢役人に渡してしまうのが林冲らしいというか何というか。
牢城に入ってみれば、ここはまさに地獄の沙汰も金次第の無法地帯。役人に付け届けを渡さなければ、散々いたぶられた末に闇から闇に葬られるのみ…と、知った時の林冲の顔が、本当に可哀想なくらい情けなくて、こちらまで見ていてお腹痛くなってきます。
それはさておき、付け届けが足りなくて、光も通さぬ土牢に放り込まれることになった林冲ですが、しかし神はまだ彼を見捨てないようです。
ちょうど牢城を訪れたのは、滄州の大人・柴進。後周の皇帝の末裔であり、武芸者好漢をもてなすのが大好きだという柴進の登場に、この機を逃しては! と最後の力を振り絞った林冲は、牢役人たちを素手で叩きのめし、柴進の元に走る走る!
そして柴進の注目を集め、もてなされることとなった林冲ですが、ここで林冲はまた可哀想になるくらい情けなく、付け届け分の十両を貸してくれと柴進に懇願。これに鷹揚に財布ごと差し出す柴進ですが、あくまでも十両だけで良いと言い張る林冲は、また真面目というか融通が利かないというか…
と、そこに現れたのは、柴進邸の武術教師・洪師範。これがまた尊大で、流刑人姿の林冲をあからさまに見下す嫌な奴…なだけでなく、林冲が必死に借りた十両を平然とパクるというゲス野郎であります。
さすがにムッとした柴進は、林冲と洪師範の試合を提案、賞金に財布の残りの金を出すと宣言(たいがいこの人もタチが悪い)するのですが、林冲はまたも十両でいいと…一体何が彼を拘らせているのか?
何はともあれ、ともに棒を手に対峙した二人ですが、林冲は、手かせ足かせを外せという洪師範の提案も拒否して自らハンディキャップマッチを望みます。そして棒の先を杖のように地面に擦らせて立つ不思議な構えを見せる林冲ですが――
言うまでもなく、強い、林冲は強い! 洪師範の最初は様子見の、やがて本気の攻撃の数々を全て紙一重で躱し、逆に地面から跳ね上げるような攻撃で追い詰める様は、先ほどまでとは別人のよう。なるほど、手足の動きを封じられた状態では最善の戦法ではありますが、ここはむしろ林冲の底知れぬ実力を讃えるべきでしょう(…気のせいか、林冲が戦う場面はこれがほとんど初めてのような気もします)。
そして宙に棒を跳ね上げられながらも、ジャンプ一番それを掴んだ林冲は、空中から体重を乗せた一撃で、棒をへし折りながら洪師範の肩に痛撃! なおも相手の体を気遣う余裕を見せる林冲、器が違いすぎます。
大喜びで賞金を差し出す柴進ですが、しかし林冲はそれを断り、先ほど洪師範が懐に入れた十両を返すよう促します。一体、林冲はどれだけ十両に思い入れがあるというのか…
と、これを隙と見たか、ムキになって刀を抜いて林冲に襲いかかってきた洪師範。ここで引き下がればいいものを…という気がしないでもありませんが、徒手空拳の林冲にとって、一撃でも食らえばおしまい、という危険な戦いとなったところで次回に続きます。まさかこのエピソードで引っ張ると思いませんでしたが、林冲が絶体絶命!? というのはいいヒキであります。
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