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2013.06.26

「水滸伝」第11話 「智深 火をもって瓦罐寺を焼く」

 さて、ドラマ版「水滸伝」のDVDレンタルも開始され、何だか完全に取り残されつつあるのこのブログですが、マイペースで行くとしましょう。前回は、降参を勧告した林冲に、卑劣にも抜き身の刀で洪師範が襲いかかる! という場面で終わりましたが、さて林冲の運命は、そして彼の真意は…

 牢城での賄賂が足りず、危うく土牢に入れられかけた林冲。折良くそこに訪れた柴進に頭を下げるという、あまり好漢らしくない手段で手に入れた十両を洪師範に取り上げられ、その十両を賭けての決闘は、手枷足枷を付けた状態でも(当然ながら)林冲の圧勝でありました。

 しかし面目を潰されて黙ってはいれぬと、刀を抜いて暴れ出した洪師範に対し、防戦一方の林冲。いや…彼が、自分の顔を潰すまいとしていたことに気付いた柴進は、林冲が本気を出すのにGOサインを出します。
 そこでほとばしる林冲の気迫! 前回も圧倒的でしたが、まだセーブしていたのか! という印象ですが、この林冲を見る柴進の視線が、完全に「林冲さんカッケー…」なのが実に可笑しい。
 それはともかく、本気を出した林冲に、恥も外聞もなく門弟を襲いかからせる洪師範。しかしもちろん叶うはずもなく、自分も完膚無きまでに敗れ去るのでした。

 そしてここで初めて、林冲の十両に拘る理由が明かされます。彼が恥じも外聞もなく、柴進に頭を下げて借りた十両――これこそは、彼がどんな手段を使ってでも、しかし脱走などせず刑期を勤め上げて妻の元に帰るという決意の証。己自身の切なる誓いのために、敢えて一時の恥を堪え忍ぶ、男の中の男の誇りの表れなのであります!

 実は原典で林冲が柴進に出会うのは、牢城に入る前。洪師範との立ち会いはあるものの、十両のエピソードは完全にドラマのオリジナルです。ここで時系列を変えてきたのはこのドラマらしいアレンジと思いましたが、それ以上に林冲の心意気を描き出す、見事な描写ではありませんか。

 そして林冲に別れを告げ、帰って行く柴進。「今までは狩りに出ても大した獲物がありませんでしたが…」などと意味深なことを言いながら林冲を見るのはどうかと思いますが、まずは地獄の沙汰も金次第。
 かつて世話をした男が酒屋をやっているのにも出会い、まずは一息ついた林冲であります。

 さて、林冲に追い返されて東京に帰る途中の魯智深は、路銀を使い果たして草木を囓るような状態(義兄弟揃って本当に金銭感覚ないな!)。ようやく見つけた瓦罐寺なる寺に斎を求めれば、そこではよれよれになった僧侶たちが。

 ここから先はほぼ原典通りの展開ですが、瓦罐寺を占拠して自分たちは酒池肉林、元からいた僧侶たちは飢え死に寸前に追いやったのは、崔道成と丘小乙という僧侶と道士の悪人コンビ。魯智深は空腹もあってこの二人にいいようにあしらわれ、這々の体で逃げ出す羽目に合わされます。

 と、そこで餓死寸前の魯智深の前に現れたのは、覆面の武芸者風の男。男の態度が気にくわないと襲いかかった魯智深ですが、実は男が史進とわかり、食い物を分けてもらって勇気百倍、瓦罐寺にとってかえします。
 対等の状態で戦えば、この二人に敵う相手が滅多にいるはずもなく、魯智深は同じ坊主同士、崔道成を常識外れのパワーでなぎ倒し、フィニッシュは投げ上げた崔道成を禅杖の三日月状の部分で受け止め、そのままポーズ!(これ、一歩間違えると崔道成の体真っ二つになるのでは)
 史進も丘小乙に容赦なく棒のコンボを叩き込んで、危なげない勝利であります。

 …しかし、僧侶たちは既に殺され、二人にさらわれてきた娘も首吊りと、結局誰一人救えなかった魯智深。せめてもの供養と、彼らを荼毘に付し、経を唱える彼の姿は、決して単なる格好だけでない僧としての風格のようなものが感じられます。
 まあ、冷静に考えると責任のかなりの部分は魯智深にある、というより本当に今回はいいところなかった魯智深なのですが…

 さて、いつの間にか少華山組と知り合ったらしい史進と別れた魯智深は、ある屋敷の扉を叩きますが…


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