「殿といっしょ」第8巻 殿は時空を超えて
紹介するのは久々な気もいたしますが、戦国4コマギャグ漫画「殿といっしょ」の最新巻であります。気がつけば2度のアニメ化に、昨年は舞台化までされた本作ですが、原作の方は、良い意味で通常運転。今回も新キャラが何人か登場して、相変わらず賑やかな内容です。
さて、その新キャラとは、主立ったところで「愛姫」「森勝蔵」「一条兼定」「藤堂高虎・遠藤直経・磯野員昌」といった面々。相変わらずメジャーどころからマイナーどころまで、幅広く投入してくる本作ですが、今回は比較的マイナー…と言っては怒られるかもしれませんが、なるほど、ここに目を付けてきたか、というチョイスであります(特にいきなり登場した浅井家臣トリオ)。
他の戦国ギャグ漫画と異なる本作ならではの特長は、単一の時代を、時系列に沿って描くのではなく、その時々によって、時間と空間を超えてメインとなる「殿」が変わっていくことでありましょう。
もちろん、ある程度はメインとなる時代・時期はあるものの、それに全く固定されることなく、自由にネタ(史実)とキャラクターを投入できるのは、本作の大きな強みでしょう。
何しろ数々の戦国ものゲームを見ればわかるように、いまや戦国武将ものはキャラクターものの一種とも言える…というのはさすがに牽強付会かもしれませんが、武将一人一人に一定数のファンがいる状況。そこに本作のようなスタイルは、うまくマッチしているのではないか…と感じるところです(もちろん描き手の側としても)。
とはいえ、さすがにそろそろややこしくなってきたかな…というのも正直なところ。扱う時代と場所があまりに増えてくると、ギャグとはいえ、一体(その四コマで)舞台となっているがいつでどこなのか、だいぶガチャガチャしてきた印象は否めません。
特に今回は、これまで関ヶ原後に顔を出していた真田昌幸の、天正期の姿が描かれるエピソードも登場するため、さらにややこしくなっている感があります。
あれ、織田と浅井・朝倉の戦は、作中でどこまで進んでいたんだっけ? 姉川の戦は終わってなかったけ? それなのに何故遠藤直経がいるの? などと混乱してしまったのは、これは私が悪いのですが…
(正解は、この8巻の時点で金ヶ崎の戦いの後、姉川の戦の前なので、遠藤直経が生きていておかしくないですね)
というのは中途半端な(そして記憶力の悪い)マニアのたわごと、やはり何も考えずに、次々と繰り出されるギャグを楽しむのが、正しいスタイルでありましょう。
最初期からの人気キャラである伊達政宗が、周囲の空気を――戦国末期の時代の流れを――全く頓着せずにマイペースで振る舞っているように、こちらもマイペースで、変わらぬ「殿」たちのボケっぷりを楽しませていただきます。
と、そんな政宗も今回はマイペースどころではなかったのですが――難儀な女性が多いな、彼の周囲も。
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コメント
今回は前回お休み?の武田晴信組が再登場しましたね。あの難儀な軍師?2人が育てた?新キャラ武田(諏訪)勝頼が今後どう絡んで行くか楽しみです。
投稿: ジャラル | 2013.06.09 19:02
ジャラル様:
さすがにこれだけキャラが増えてくると、お休み組が出てくるのはやむを得ないですが、こういう形で絡んでくるとはちょっと意外(まあ、勝頼も成長した姿では登場しましたが)
それにしても、いつもギャグなのに時々泣かせを入れてくるのは本当にずるい(笑)
投稿: 三田主水 | 2013.06.16 14:43