「曇天に笑う」第6巻 そして最後に笑った者
人類の天敵・オロチの復活を巡り、琵琶湖畔の曇神社の三兄弟――天火・空丸・宙太郎の波瀾万丈の運命を描いてきた「曇天に笑う」もこの第6巻でついに完結。あまりに衝撃的な展開だった第5巻発売以来、この日をどれほど待ちわびたことか…そして手にした最終巻は、まさに大団円の一言であります。
300年に一回復活する邪悪な怪物・オロチが復活する際に宿る「器」――それは曇神社の次男・空丸。己を蝕むオロチに負けまいと必死に戦う空丸でありましたが、ここで彼を恐るべき裏切りが襲います。
これまで空丸たちを暖かく見守ってきた風魔の忍び・金城白子。実に彼こそはオロチに仕える風魔一族の長であり、そして曇兄弟の両親の仇――空丸にとってはもう一人の兄とも言うべき白子の裏切りは、空丸にとって、そして読者にとっても絶望的、としか言いようがないものであります。
かくて空丸の絶望の中で復活したオロチの下に風魔の忍びたち、そして琵琶湖の巨大牢獄・獄門処の脱獄囚たちが集い、膨れあがった「敵」の前に、もはや為す術なしか…
というところで始まったこの最終巻ですが、いやはや、冒頭からラストまで、死闘また死闘の大決戦。どこまでも絶望的な状況の中、天火が、宙太郎が、犲の面々が、牡丹が比良裏が、いやそれだけではない数多くの人々が、それぞれの想いを胸に立ち上がる――そしてそこに一人一人のドラマが重なることは言うまでもなく――姿はただただ圧巻であります。
(個人的に、これまでのキャラクターが全員揃って最終決戦、というパターンに非常に弱いだけに…)
そして、そこで中心となるのが曇三兄弟であることは言うまでもありません。
オロチの力で命を繋ぎながらも弟たちのために戦う天火、一度は絶望に道を踏み外しかけながらも優しさを失わない宙太郎。そして空丸も…
一人一人は欠けた点があったとしても、互いを想い合い、支え合うこと人はより強く、より良く生きることができる――そんな口にしてしまえば当たり前のことも、彼らの姿を見れば、そして最後に笑った者の姿を知れば、実に素晴らしく、また格別のものとして、感じられるのです。
そして彼ら兄弟の、そして彼らとともに戦う若い力の姿を見れば――そしてオロチや風魔といった彼らが敵とする者たちの存在を考えれば、本作がなぜ明治の初めという、古きものと新しきものが交錯する時代を舞台としたかわかろうというものであります。
変わっていくもの、変わらないもの。変わらなければいけないもの、変わってはいけないもの――その交錯の中に、「曇天に笑う」という物語はありました。
そして大団円を迎えた本作ですが、なんとTVアニメ化されるとのこと(分量的にもちょうど良いでしょう)。
おそらくはそれに合わせてでしょうか、冬には「曇天に笑う」番外編、さらに本編で幾度か触れられ、最後の戦いでも重要な意味を持った三百年前の戦いが、「煉獄に笑う」のタイトルで描かれるとのことであります。
一つの物語は終わりましたが、しかしまだまだ大いに笑わせてくれそうであります。その時を(最終巻の時よりは落ち着いて)待つことといたしましょう。
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