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2013.09.13

「陰陽師 瀧夜叉姫」第3巻 ついに語られるその人の名は

 現在、歌舞伎座の九月花形歌舞伎夜の部で、非常に豪華な出演陣で上演されているという実に良いタイミングで、漫画版の「陰陽師 滝夜叉姫」第3巻が登場であります。起承転結でいえば、承から転に移った辺りでしょうか、まだまだ先の見えないようでいて、しかし…というところであります。

 都の夜を騒がす数々の奇怪な事件。様々な貴族たちを脅かしてきた怪事の中でも、その最たるものといえる平貞盛の顔に生まれた奇怪な瘡――前の巻では、その瘡と晴明との対峙が描かれましたが、この巻の冒頭で描かれるのは、瘡と芦屋道満との対峙であります。
 晴明よりも前に貞盛に治療を依頼された道満が、如何に瘡と対峙したか…正直なところ、この辺りの描写は――夢枕作品読者にとっては何となくお馴染みに感じられるものの――やはりビジュアルで見るとかなりグロテスクではありますが、第2巻の感想で申し上げた通り、そのグロテスクさを真っ正面から描いてみせるのは、これは作画の睦月ムンクの力というものでしょう。

 さて、ここまで怪事に出会ったことが描かれたのは、この貞盛の他、盗らずの盗人に襲われた小野好古と俵藤太でしたが、さらにこの巻では、奇怪な五頭の大蛇に襲われた藤原師輔と、夜ごと奇怪な女に体を釘打たれる夢に苦しめられる源経基の姿が描かれますが――
 彼ら五人に共通するあの人物の名が、今回ついに語られることとなります。

 すでに歌舞伎のキャスティングを見れば明らかではありますので(そしてわかる方であればサブタイトルで一目瞭然ではありますが)その名をここで挙げてしまえば、それは平将門…本作の時間軸の20年前、関東で新皇と名乗り兵を挙げた、あの平将門です。

 そして、本作における平将門のビジュアルがまた良いのであります。
 この巻で描かれたのはほんの数コマ、それも登場人物たちが思い浮かべたイメージとしての登場なのですが…いや、これが何ともゾクゾクさせられるような迫力と妖気を感じさせる姿なのであります。
 第2巻に登場した俵藤太のビジュアルを評して、私は「太い」と申し上げましたが、その藤太に討たれた将門公もまた、別の意味で「太い」ものを感じさせるのであります。


 さて、その平将門が、この一連の怪事にどのように関わってくるのか…ゆったりと進んできた印象のある本作ですが、彼の名が登場したことで、いよいよ物語は佳境に突入した感があります。
 20年前に何が起きたのか…夢枕作品名物の長い過去編にそろそろ突入しそうですが、それもまた楽しみにできそうであります。


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