「信長のシェフ」第8巻 転職、信玄のシェフ?
快調に巻を重ねてきた「信長のシェフ」の第8巻であります。前の巻では比叡山焼き討ちという一大事件が描かれましたが、この巻は信長にとっては比較的静かな時期。…と思いきや、主人公・ケンの周囲は色々と激動の展開であります。
この巻の冒頭で描かれるのは、信長の暗殺未遂事件。
本願寺との手打ちを改めて行うこととなった信長は、本願寺から珍しい西洋菓子としてマカロン(!)を振る舞われるのですが――そこに使われた食材が、信長に毒となって襲いかかることとなります。
幸い、ケンがその正体を看破したことで事なきを得ますが(ちなみにこの後、料理の恨みは料理で返せ! と言うようなことをケンに命じる信長が、いかにも料理漫画キャラ的でちょっと楽しい)、本願寺側の料理人といえば、謎の女性・ようこ。
どうやら、いやほぼ確実にケンと同様未来から来た彼女ですが、ケンは記憶を失っている一方で、ようこははっきりと彼のことを覚えている様子であります
そうとは知らないケンは、料理で人を害しようとは同じ料理人として許せない! とばかりに彼女を責め立てるのですが…そこで堪えていたものが一気に爆発したようこさん、昔はあんなに愛し合ったのに的発言。
が、間の悪いことにその場にいたのはようこの下に潜入していた信長の忍び・楓と、タイミング良く(?)やってきた鍛冶屋の夏。
ケンを巡る三人のヒロインが一同に会するという、プチ修羅場であります。
そんなことがあってギクシャクした関係になってしまったケンと夏ですが、そこに襲いかかるのは、信長包囲網を巡らさんとする甲斐の武田信玄。ケンを信長の快進撃の原動力の一つと睨んだ信玄は、ケン暗殺を命じるのですが――
ここでも芸は身を助くと言うべきか、利用価値があると見込まれて甲斐に連れて行かれたケン(と夏)。ここで信玄の体調が悪いことを見抜いたケンは、信玄の身を食事療法で治すと宣言することになります。
かくて信玄のシェフとなったケンですが、しかしいかに生き延びるためとはいえ、これはある意味利敵行為。さらに、勝頼が夏を気に入ってしまって…
と、信長にとっては嵐の前の静けさの状況の中、ケンは相変わらずのクリフハンガーぶりであります。
ちょっと感心させられるのは、この巻で描かれる事件――すなわち、信長暗殺未遂、ケンとようこの再会、ケンと信玄の出会い――が流れるように繋がっていくことで、一つ一つ取り出してみれば実はけっこうとんでもない展開が違和感なく続いていくのは、なかなかうまい構成であると感じます。
そしてラストには、タイムスリップものには定番のあの展開が匂わされるのも――ケンがそれに自覚的な点も含めて――面白い。
登場する料理の意外性と見事さは言うまでもなく、今や脂の乗りきった作品と言うほかありません。
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