「戦国武将列伝」2013年12月号(その一) 大剣豪、その奥義は
二ヶ月に一度のお楽しみ、リイド社の歴史・時代漫画誌「戦国武将列伝」の最新号であります。今号では「信長の忍び」の重野なおきの戦国四コマ漫画の連載も始まり、いよいよ隙がなくなってきた感のあるこの雑誌、今回も特に印象に残った作品を取り上げて紹介しましょう。
「魔剣豪画劇」(山口貴由)
今号も巻頭を飾る絵物語も、早いものでもう第4回。今回は、日本剣法界の祖の一人である塚原卜伝ですが――やはり通り一遍の内容ではありません。
ここで登場するのは、既に老境に入った卜伝。その卜伝を、第1回以来久々に登場の宮本武蔵が訪れるのですが…卜伝は武蔵をかつての弟子の足利義輝、あるいは子の彦四郎と思いこんで話しかける状態。そう、卜伝は曖昧になっていたのであります。
そんな卜伝の状態に漬け込み、奥義である一ノ太刀を盗まんとする武蔵。そんな彼に対し、卜伝は奥義の心得を語るのですが…
さながら短編小説的味わいのあるこのシリーズですが、特にその印象が強い今回。卜伝の語る内容はここでは伏せますが、卜伝に対しても、(卜伝を一見虎眼先生を思わせるキャラに造形してみせた)作者に対してもやられた! と唸らされました。
いやはや、卑怯の達人の武蔵も脱帽するわけであります。
「政宗様と景綱くん」(重野なおき)
冒頭で触れた重野なおきの新連載は、タイトルからわかるように、あの伊達政宗と片倉景綱(小十郎)を主人公にした四コマ。
といってもただの二人で終わるはずもなく、本作に登場するのは、引っ込み思案な政宗とドSな景綱なのですが――
今回は、その二人の出会いが描かれるわけですが、幼い頃の病で片目を失い、引っ込み思案な政宗を見るに見かねた父からつけられた景綱――というシチュエーション自体は史実通りですが、景綱がのっけから趣味と忠義を兼ねた(?)ドSっぷりを発揮するのが実に楽しい。
もちろんギャグで終わらず、締めるところはきっちり締める作者らしく、ラストでは政宗と景綱、主従それぞれの覚悟が描かれることになります。
正直なところ、今回は初回ということで抑え気味にも感じられましたが、独眼竜が誕生して、いよいよ次回からが本領発揮というところでしょうか。次が二ヶ月先というのがどうにも残念ではありますが…
今回も長くなってしまいましたので、次回に続きます。
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