« 「大帝の剣」第2巻 三千世界の最強決定戦開幕! | トップページ | 「義経になった男 2 壇ノ浦」 平家滅亡の先の真実 »

2014.03.07

「鬼舞」第1巻 怪異描写も巧みな漫画版御所の鬼

 第一部ともいうべき「呪天編」の完結編が発売されたばかりの瀬川貴次「鬼舞」シリーズですが、それとほぼ時期を同じくして、厘のミキ作画による漫画版の単行本第1巻が発売されました。約3年前に刊行されたシリーズ第1弾「御所の鬼」の忠実な漫画化であります。

 「鬼舞」シリーズについては、これまでこのブログでも新刊が発売されるたびに紹介してきましたが、播磨から京に出てきた陰陽師志望の少年・宇原道冬を主人公に、安倍晴明の二人の息子や渡辺綱、様々な鬼やもののけらが織りなす時にコミカル、時にシリアスな平安ファンタジーであります。

 私もこのシリーズの大ファンですが、もともと良い意味で漫画チックなあの世界を本当に漫画化するのはいかがなものかしら…と読む前は思いましたが、これがなかなか、いやかなりよくできている印象。
 恥ずかしながら作画担当の厘のミキの作品は初めて読みましたが、キャラのビジュアルもさることながら、原作者自身が触れているとおり怪異描写も巧みで、原作のイメージから外れる部分はないと感じます。

 おそらく原作(の挿絵)と一番大きく異なるのは、道冬がかなり可愛らしい顔立ちになっている点ではないかと思いますが、原作での異常なモテっぷりや、その後に女装して内裏に出入りすることになることを考えれば、これぐらいでも不自然ではないようにも感じられます。
 その一方でやりすぎ感が漂うのは、安倍吉平・吉昌兄弟に対する後輩学生たちの熱いまなざしが、(フィクションにおける)女学生のそれで、さすがにそれはないのではないかな…とは感じますが、これはまあ原作由来ではあります。


 また絵柄だけではなく、ストーリー面の処理もなかなかのもの。
 この漫画版第1巻で原作第1巻を消化しているため、分量の関係ではそれなりにダイジェストされているはずなのですが、しかしほとんど不自然さを感じさせない内容になっています。
 何よりも、原作初読時は今ひとつピンとこなかった、安倍吉昌が道冬を気に入る場面から――もちろん既に原作での二人の姿に馴れていたという理由もありますが――説得力が感じられたのは嬉しいところであります。


 冒頭でも述べたとおり、原作の方はちょうど「呪天編」が完結したところ。
 これまでの物語を振り返る意味でも、このタイミングで漫画版が刊行されたのは、なかなか嬉しいところであります。


「鬼舞」第1巻(厘のミキ&瀬川貴次 集英社マーガレットコミックス) Amazon
鬼舞 (マーガレットコミックス)


関連記事
 「鬼舞 見習い陰陽師と御所の鬼」 ネクストジェネレーションの陰陽師たち
 「鬼舞 見習い陰陽師と橋姫の罠」 狙い所のど真ん中を射抜く快作
 「鬼舞 見習い陰陽師と百鬼の宴」 恐るべき百鬼夜行の罠!?
 「鬼舞 見習い陰陽師と試練の刻」 陰陽師たちの学園もの!?
 「鬼舞 見習い陰陽師と爛邪の香り」 現在の謎、過去の謎
 「鬼舞 見習い陰陽師と災厄の薫香」 大内裏に迫る危機 硬軟交えた屈指の快作!
 「鬼舞 見習い陰陽師と悪鬼の暗躍」 緩急自在のドラマ、そして畳
 「鬼舞 ある日の見習い陰陽師たち」 若き陰陽師たちの拾遺集
 「鬼舞 見習い陰陽師と呪われた姫宮」 ついに出現、真の敵!?
 「鬼舞 見習い陰陽師とさばえなす神」 ギャグとシリアス、両サイドとも待ったなし
 「鬼舞 見習い陰陽師と応天門の変」 ついに交わる史実と虚構

|

« 「大帝の剣」第2巻 三千世界の最強決定戦開幕! | トップページ | 「義経になった男 2 壇ノ浦」 平家滅亡の先の真実 »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 「鬼舞」第1巻 怪異描写も巧みな漫画版御所の鬼:

« 「大帝の剣」第2巻 三千世界の最強決定戦開幕! | トップページ | 「義経になった男 2 壇ノ浦」 平家滅亡の先の真実 »