「戦国武将列伝」 2014年4月号 層の厚さ、安定の内容
二ヶ月に一度のお楽しみ、リイド社の「戦国武将列伝」の最新号であります。今回は新連載等や読み切り等はありませんが、既に安定した内容と言いましょうか、レギュラー陣だけで十二分に楽しめる内容であります。いつものように、特に印象に残った作品を取り上げていきましょう。
「魔剣豪画劇」(山口貴由)
巻頭の剣豪絵物語シリーズ、今回は一部で待望の柳生宗矩。
文中で二度も言及されるように、鼻の下に端正な髭を蓄えたダンディーなビジュアルの宗矩ですが、描かれるのは小野忠明との関係と、彼の剣豪としての晴れ舞台とも言うべき大坂の陣での活躍であります。
今回は残酷度はかなり抑え目なのですが、それすらもこの人物らしい…と言うべきでしょうか。
「孔雀王 戦国転生」(荻野真)
いよいよ墨俣の戦も目前となった今回描かれるのは、織田信長の過去であります。
秀吉が本物の猿だったり、家康が吸血鬼だったりする本作ではあまり気になっていませんでしたが、冷静に考えれば十代の美少女にも見紛う信長の姿もまた異常。どうやらその原因は、帰蝶いやその父である斉藤道三の「呪」がある模様で――
今のところ黒幕的存在である道三が登場し、物語も大きく動き出した感がありますが、ここでほのめかされる道三の「正体」がある意味「孔雀王」らしい…と昔からの読者としてはちょっと懐かしく感じたところです。
「鬼切丸伝」(楠桂)
前回は信長の比叡山焼き討ちでしたが、今回はその比叡山に押し込められた豊臣秀次の物語。なるほど、殺生関白と呼ばれた彼は、本作に登場するに相応しいと言えるでしょう。
そんな彼が、自分を疎んじる秀吉を鬼と恐れるうちに…という今回のエピソードは、そんな彼の事績を知っていれば、ある程度展開は予想がつくものなあります。その点は少々残念なのですが、そこからさらに捻って人間のどうしようもない業を感じさせる結末は、さすがと言うべきでしょう。
「戦国自衛隊」(森秀樹)
タイムスリップしていきなり野武士退治と、地味ではありますが、ある意味自衛隊の本分(と言い切るのはいささか抵抗がありますが)を生かした展開の連載第2回。
近代兵器で楽勝かと思いきや、戦場で興奮しきっている相手には銃弾が当たってもあまり効果がないという、厭なリアリティは今回も健在であります(刀を取っての一騎打ちかと思いきや…という展開もその流れと言うべきでしょうか)。
しかし今回の最大のサプライズは、突然かつ当然のように現れたある存在なのは間違いありますまい。扱い如何では、戦国時代どころではないとんでもない改変になりかねない存在の登場に、俄然先の展開が気になって参りました。
その他、「セキガハラ」は、能力復活のために密かに越後を訪れた三成の前に、ついに直江兼続が登場、宇喜多同様、別の作品のキャラのようなビジュアルであります。
また「政宗さまと景綱くん」は、政宗に小十郎にとくればこの人の、お喜多が登場、いかにも本作らしい極端なキャラが楽しいところであります。
さらに「後藤又兵衛」は、山崎の戦で、又兵衛がいくさ人としての在り方を教えられる…という展開でしたが、いずれも少々小粒に感じられた――と言ってしまうのは、大変な贅沢でありましょう。
もちろん、現在の本誌に、それだけの層の厚さが感じられるということではありますが…
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