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2014.07.05

「僕僕先生」漫画版 連載開始!

 既に一月近く前の話題で恐縮ですが、ボクっ娘仙人の僕僕と、ニートの無気力青年・王弁の不思議な旅を描く 仁木英之の中華ファンタジー「僕僕先生」が漫画化されました。朝日新聞出版の「Nemuki+」誌の7月号からの連載開始、作画を担当するのは大西実生子であります。

 「僕僕先生」シリーズについては、これまでも全作このブログで取り上げておりますが、仁木英之のデビュー作であり代表作、これまで短編集を含めて7巻刊行されているシリーズであります。
 中国は唐代を舞台とした神仙妖魔入り乱れるファンタジー…といえばさまで珍しくないようにも感じられるかもしれませんが、本作の最大の特徴が、タイトルロールたる僕僕先生が、ボクっ娘の美少女であることは、間違いありますまい。

 当然、本作を漫画化するとすれば、僕僕先生のビジュアルが最大の眼目と申しましょうか、最も気になる点であるのですが――
 少なくともキャラクターデザインの点では、全く問題なし、作中の、原作の表紙イラストのイメージを崩すことなく、ミステリアスな美少女仙人を描き出していると感じます。

 ここでキャラクターデザインの点では、といういささか奥歯にものが挟まった表現となってしまったのは、実は連載第1回においては、ようやく僕僕先生が顔を出したところで次回に続く、という展開であるためなのですが…
 しかし、夢枕獏の「沙門空海唐の国にて鬼と宴す」を達者な筆で漫画化してみせた(早期の連載再開を望む!)作者ならではの柔らかな描線は、作品のムードによく合っているように感じるのであります。

 しかし個人的にこの連載第1回で強く印象に残ったのは、酒場を訪れた王弁が、一番遠くからやってきた者として、盲目の楽士から異境の物語を聴く場面であります。

 王弁にとっては(無気力な彼にとって精一杯の外界への憧れを示すものであったとしても)一時の気散じであったものが、相手にとっては二度と戻れない故郷への懐旧の念の表れとなる…
 というこの場面は、原作を初読の際はさらりと読んでしまいましたが、その後の王弁の旅が、突き詰めれば異境の人々――いや異界の人ならざる者たちも含めて――との関係性を描く物語としての性質を強く持つことを思えば、重要な場面とも感じられます。

 その場面を、本作においては静かな筆致で、しかし心に残るような重みを以て描き出しており、この点を鑑みれば、今後の展開も期待できるのではないかと感じた次第。


 実は物語冒頭には、原作読者が「おっ」と思うようなアレンジも施されており、なおさら期待は高まろうというものです。


「僕僕先生」(大西実生子&仁木英之 朝日新聞出版「Nemuki+」連載) Amazon
Nemuki+ (ネムキプラス) 2014年 07月号 [雑誌]


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