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2014.08.31

「戦国武将列伝」2014年10月号(その一) 真の敵、その正体は

 隔月刊の雑誌の場合は、発行月の二ヶ月先の月を号数とするわけで、この「戦国武将列伝」誌は10月号。何やら時間の流れの早さを感じさせます。今号では連載レギュラー陣に加え、ゲストとして初登場の三宅乱丈の短編が掲載されています。今回も、印象に残った作品を個別に紹介していきましょう。


『セキガハラ』(長谷川哲也)
 単行本第3巻発売ということで巻頭カラーの本作、展開されるのは、後に関ヶ原で激突する石田三成と徳川家康のそれぞれが、黒田家の前当主・現当主と激突するという展開。
 三成vs長政、家康vs如水――ある意味関ヶ原の前哨戦とも言える顔合わせですが(如水の場合、戦に乗じて九州を奪おうとしていたという巷説を採れば)、なるほど、第三勢力としてぶつけるには、黒田家はうってつけかもしれません。

 面白いのは、牢内に囚われた三成を襲うために現れた長政を、ある記憶が苦しめるという展開。牢といえばどうしても父の如水の方を連想しますが、こういう視点もあったか、と納得です。
 そしてどう考えても天魔というより「アラビアンナイト」に登場する怪物と化した(一体化?)した如水は、ある意味掟破りの外来語を冠した技を連発、超肉体派の家康を苦しめるのですが…
 ラストに登場したある存在がこの先物語にどう絡むのか、案外根の深いことになりそうであります。


『孔雀王 戦国転生』(荻野真)
 稲葉山城編も今回でクライマックス、濃姫に誘われた向かった先で繰り広げられる五番の呪い能の中で、自らの出生の秘密を知ってしまった信長ですが…

 前回もこの信長の、もう一人の孔雀王と言うべき出生に唸らされたのですが、今回の戦いの果てに浮かび上がる真の敵の正体が実に面白い。
 これまで幾度となく肉体を変えながら生き続け、呪われた子・信長をこの世に生み出し、利用しようとしたモノ。そして孔雀にとっては、阿修羅の運命をねじ曲げ、この戦国時代に誘った存在…

 最後の最後にほのめかされるその存在の正体は、意外というか罰当たりと言いましょうか(ただし、最初のシリーズにも題材となっていた記憶が)、しかしそれでこそ『孔雀王』! と言いたくなってしまうもの。
 前回の感想でも述べましたが、舞台となる時代は変われど、きっちりと『孔雀王』してくれるのが実に嬉しいところであります。

 そして「古き神」の存在が言及されたことを鑑みれば、あるいは未完の『曲神記』まで繋がっていくのでは、というのはいくら何でも欲張りすぎとは自分でも思いますが…


『政宗さまと景綱くん』(重野なおき)
 前回元服したかと思えば今回は婚儀と、毎回激動の(?)連続である本作、当然のことながら今回は、婚儀の相手である愛姫がメイン。

 いかにも作者のキャラらしく可愛らしいビジュアルの一方で、坂上田村麻呂から続く実家の家系を鼻にかけた愛姫を、政宗がどう扱うか…と思いきや、ここでもう一人のタイトルロールが動き出すという展開は、定番ながらもやはりよくできた展開と感じます。

 伊達輝宗や喜多のボケっぷりも楽しく(特に後者のむしろ暴走にはちょっとドキドキ)、やはりこの辺りの呼吸は作者ならではと感じます。


 長くなりますので次回に続きます。


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