『およもん 妖怪大決闘の巻』 妖怪&剣豪、大決闘×2
ある晩、某藩上屋敷の金蔵から、千両箱が盗まれた。警護の侍たちは皆「およっ!」という叫びを上げて失神したことから、およもんが犯人と疑われてしまう。およもんの無実を信じる福井淳之介と子供たちだが、当のおよもんが何者かにさらわれてしまった。果たして金蔵を破った妖怪の正体とは…
いまや妖怪時代小説の名手となった感のある朝松健が、(ほぼ)妖怪時代小説専門レーベルたる廣済堂モノノケ文庫から贈る『およもん』シリーズの第3弾であります。
見かけはかわいい幼児ながら、その正体は、「もんもんばぁ!」の声とともに対峙した相手が最も恐れる存在に変じ、相手を「およっ!」という悲鳴とともに気絶させるという大妖怪「およもん」。
かつて封印されたものの、ある事件がもとで江戸時代に復活し、今は浪人・福井淳之介とその娘・咲月と平和に暮らすおよもんでありますが、今回も大事件に巻き込まれることとなってしまいます。
それも、彼のオリジンにも関わる事件に…
今回登場するのは、「およっ!」という悲鳴とともに人々が気絶する隙に、大金を盗み出す盗賊団。手口だけ見ればどう考えてもおよもんの仕業にも思えますが、しかしおよもんがそんなことをするわけもなく、アリバイもあります。
しかしそんなおよもんに目を付けたのは、奉行所の粘着同心。およもんの濡れ衣を晴らすために、淳之介や親友の中山安兵衛、咲月ら子供たちは江戸中を奔走することになるのですが、その間も次々と事件が起きます。
何者かに連れ去られてしまったおよもんに、入れ替わるように長屋に現れた謎の白い犬。暗躍する盗賊団…
そして妖怪学の専門家・友野…ではなくて伴野祥斎を訪れた安兵衛たちは、およもんの正体と、彼と対になるもう一体の大妖怪の存在を知ることに…
思わず笑みが浮かぶような可愛らしい外見とそれにふさわしい言動の一方で、ほとんど無敵と言ってよい能力を持つおよもん。何しろ相手が気絶するほど恐ろしいモノに変身できるのですから、ほとんどこれを防ぐことは不可能のようなものであります。
しかし、もしおよもんと同じ能力を持つ存在が現れ、そしておよもんと敵対したとしたら…ここにおよもんは最大の敵を迎えることとなります。
さらにおよもんたちの起源、そして致命的な弱点まで描かれてしまうことに…!
そして繰り広げられるのは、まさにサブタイトルに偽りなしの妖怪大決闘――なのですが、実は大決闘はそれだけではありません。
実はそれに並行して描かれる、もう一つの大決闘があるのですが…その詳細は伏せるとして、なるほど、ここであの人物のあの史実を活かしてきたか、と思わずニンマリの展開なのです。
さて、ほとんどクライマックスのような大決闘×2でしたが、まだまだ物語は続いて欲しいもの。
およもんが何者かがわかったとしても、およもんはあくまでもおよもん。長屋の人々と江戸の平和を守る、正義の子ども妖怪であることは間違いないのですから…
『およもん 妖怪大決闘の巻』(朝松健 廣済堂モノノケ文庫) Amazon
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