『戦国武将列伝』2014年12月号(その一) 迷彩服が象徴する二つの力
時間が経つのは早いもので、もう前号から二ヶ月、『戦国武将列伝』最新号が発売されました。今回の表紙&巻頭カラーは、連載二周年&単行本第2巻が発売されたばかりの『孔雀王 戦国転生』であります。今回も印象に残った作品を一つずつ挙げていきたいと思います。
『孔雀王 戦国転生』(荻野真)
その孔雀王は、前回信長の正体を巡る大きな展開が一段落ついて、今回は小休止的エピソード。信長の妹・市の輿入れであります。
といっても本作の世界観における市もまた個性的。信長の父・信秀と(おそらくは)黒人の間に生まれた異貌の美少女(黒ギャル?)であります。
今回、浅井長政に輿入れすることになった彼女を孔雀が警護するものの、その前に一向宗が立ち塞がって……という展開は、一向宗がほとんど不死身の存在だったりという要素はあるものの、孔雀と市の交流が中心で、前回までに比べるとかなりおとなしめの印象。
とはいえ、市を見送る孔雀のラストの台詞は、史実を知る者ゆえの重みが感じられてなかなかでありました。
ちなみに本作、リイド社の公式サイトで4分弱のプロモーションアニメを公開中。監督を古橋一浩、孔雀役を鈴木達央ときちんとしたメンバーで作られており、特に孔雀王の法力アクションシーンなどは、昔からのファンにはちょっと嬉しいものがあります(あと、おそらく世界初のガン=カタを駆使するゴリラも見所)。
『戦国自衛隊』(森秀樹&半村良)
今回描かれるのは、伊庭と、以前隊から脱走した部下である浦切との対決。
自衛隊としての、未来人としての枠を外れ、自衛隊の装備を用いて暴走するキャラクターというのは、戦国自衛隊というタイトルを冠する作品においては定番であります(個人的には最初の映画の渡瀬恒彦を思い出します)。
それは本作においても同じですが、伊庭と浦切(またどこかで見たような顔ですが……)、全く相反する道を行くこととなった両者の直接対決を、自衛隊員を象徴する「迷彩服」をキーワードに描くのが強く印象に残ります。
戦国において最強の戦力たる自衛隊の力をどう用いるか――それは言い換えれば、強すぎる力を持ったときに人はどう振る舞うか、どう振る舞うべきか、という普遍的なテーマでありますが、それを本作は、ともに迷彩服を着た二人の対決に集約して描くのであります。
正直に申し上げてこれまでいささかネタ的な面白さが先行していた感のある本作ですが、今回はドラマとして真っ正面から面白い……そんなエピソードでありました。
ラストには本作らしい先の読めない引きもあり、歴史は彼らに何をさせようというのか、これは大いに気になるところであります。
少々長くなってしまいましたので次回に続きます。
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