『天威無法 武蔵坊弁慶』第3巻 大転換、争奪戦勃発!?
武村勇治による新・弁慶伝『天威無法 武蔵坊弁慶』の第3巻であります。この巻では前の巻までの展開から一転、恐るべき力を秘めるという六巻の巻物を巡る争いが始まることとなります。その巻物の名前とは、あの……(以下、ネタバレ分を含みます)
己の為すべきことを求めて山を下り、一度は義経一行と行動を共にした鬼若(弁慶)。しかし都で破天荒な言動を見せる清盛に興味を持った彼は、清盛と行動を共にすることになります。
清盛の飼う雷音(ライオン)を素手で倒す力を持つ鬼若とは全く次元も意味も異なる「強さ」を持つ清盛に鬼若も興味を持つのですが……
と、この巻でその鬼若の前に現れるのは、清盛の甥であり、義経にとってはライバルとも言える平教経。一見軟弱な御曹司に見えつつも、鬼若にも匹敵するほどの力を持つ彼は、自らの目的のため、鬼若を誘います。
その目的とは、清盛の力の源と目される堂の秘密を探ること。
そこに潜入してきた義経の双子の妹・遮那も加え、呉越同舟、三人三様の思惑を秘めて清盛邸に潜入した三人を待っていた者は――
修行者とも聖者とも見える一人の男、その名は鬼一法眼! 義経ものには定番のあの人物、義経に鞍馬流の剣法を授けたとも、伝説の兵法を授けたとも言われる陰陽師でありますが――ここでクローズアップされるのはその伝説の兵法・六韜であります。
そも六韜とは、かの太公望呂尚が記し(というのは偽伝だそうですが)、三略と並び称される兵法書。六韜の名が指すように「文韜」「武韜」「龍韜」「虎韜」「豹韜」「犬韜」の全六巻から成るものですが――
本作においてはその六巻は散逸、それぞれ別々の人物がその手に収めていたのであります。
それは清盛、後白河院、木曾義仲、源頼朝、そして藤原秀衡……実に、この平安末期の世で巨大な力と存在感を示した者たちであります。
おそらくはこの後、この錚々たる面々が六韜争奪戦を演じるのだと思いますが……いやはや、ここに来てまさかの伝奇ものの王道展開、巻物争奪戦とは!
こう言っては大変失礼ですが、キャラクター造形や描写については、いかにも作者らしい豪快さがあったものの、物語的には比較的(あくまでも比較的、ですが)おとなしめな部分があった本作。
それがここにきて一気に大爆発したのは、これは実に嬉しいとしか言いようがありません。
源平合戦もので主人公は義経サイドとくれば当然登場は予想された鬼一法眼ですが、まさかここまでとんでもない役割を果たしてくれるとは……とニコニコしているところであります。
この巻のラストでは、巻物を手にした中でも最もおとなしそうな人物がとんでもない力(仮面の忍者赤影か!)を手中に収めていることが示されるなど、いやはやこの先何が起きてもおかしくない展開。
一気に強者だらけとなったこの世紀末に、果たして鬼若の望む強さは得られるのか? これからが本番でありましょう。
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