『ケダマメ』第1巻 未知の時代に現れた未知の男!
1246年、ある殺人事件を追って鎌倉を訪れた役人・戸浦は、傀儡一座の隻腕の若者・虚仮丸から異様な匂いを感じ取る。常に人をはぐらかすような言動を見せる虚仮丸の真の顔とは何か。鎌倉に天変地異が起き、奇怪な宗教教団・髑髏道が動き出す時、虚仮丸がその真の姿を見せる……
『オメガトライブ』『かもめ☆チャンス』と一作毎に大きく題材を変えてきた玉井雪雄の最新作は、時代もの――それも鎌倉時代中期を舞台とした、ミステリアスな物語であります。
時は1246年、北条時頼が第五代執権に就任し、クーデターを起こした前将軍・九条頼経が時頼により鎌倉を追われた年。
巷では遊び女が次々と何者かに――刃物ではなく、何かで断ち切られたかのような姿で――殺され、髑髏道なる人の髑髏を弄ぶ奇怪な宗教集団が闊歩する、そんな混沌の巷たる鎌倉が舞台となります。
そして主人公となるのは、その鎌倉にやってきた傀儡一座の一員である左腕のない若者・虚仮丸。
一体どこから来たのか、そして何故一座に加わったかも一切不明、他人から何を問われても突拍子もない話(虚仮)ではぐらかす虚仮丸は、一座の踊り手であるまゆから、半ば親しみと半ば疑いの目で見られている……そんな状況であります。
そんな中、次々と何者かに襲われることとなる虚仮丸とまゆ。髑髏道が、幕府の役人が彼らを追う中で、虚仮丸が語った彼の使命、そして彼の真の姿とは……!
第1巻ということもあり、まだまだ先の展開が全く見えない本作。物語自体はテンポ良く進み、対立関係なども比較的シンプルに見えるのですが――
しかし、全てを混沌の中に叩き込むのが、主人公たる虚仮丸の存在。上で述べたように虚仮ばかり語るような彼ですが、しかし彼が物語の随所で見せるその「能力」は、こちらの目を疑わせるようなものであります。
彼のその能力の正体は、彼の真の名と思しき、そして本作のタイトルである「ケダマメ」とは、彼が来たという明日(アケシダ)とは……
わからない、全くわからないことだらけなのですが、全く目が離せないのは、その圧倒的な筆力で描かれる虚仮丸の異形、そして混沌たる鎌倉の姿があまりに魅力的であるからにほかなりません。
思えば鎌倉時代というのは、百数十年足らずという期間にもかかわらず、その初期と末期、あとは元寇前後を除けば、フィクション不毛の時代。
裏を返せば、我々読者にとっては未知の時代でもあります。
そんな未知の時代を舞台に、未知の男が何をするのか……わからないからこそ見てみたい、そんな物語の幕開けであります。
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