『真田魂』連載開始 家族の物語と未知の世界の物語と
この1月末より、WEBマンガサイト・ヤングアニマルDensiにおいて重野なおきの戦国四コマ漫画『真田魂』の連載が始まりました。言うまでもなく主役となるのは真田家――幸隆、昌幸、信幸、幸村ら真田一族の活躍が、作者一流のコミカルかつ丹念な筆で描かれております。
信長×2、官兵衛、政宗ときて、これで作者の戦国四コマは5作目(『戦国雀王のぶながさん』を除く)。
どの作品の主人公も、いずれも戦国時代の人気もの揃いですが、しかしその人気という点では、本作の主人公の一人である幸村も負けておりますまい。それだけに本作は満を持しての連載開始、という印象があります。
その連載第一回は、真田幸隆が武田家に身を寄せて数年後の戸石城攻めから始まります。
この戸石城攻めは、かの武田信玄(晴信)が惨敗した戸石城を、戦闘ではなく調略のみで陥落させてみせたという、真田一族の物語の開幕に相応しい逸話ですが、これを冒頭2ページで消化してしまいます。
その後、幸隆の子・昌幸の結婚のエピソードが分量的には今回の中心として描かれるのは、一見奇妙に思われるかもしれませんが、しかし昌幸の「眼」の良さをギャグの原動力としてテンポよく進む物語の前には、そんなことはすぐに気にならなくなるのは間違いないところ。
何よりも、昌幸と彼の妻となる山手の姿からは、何ともほほえましく暖かいものが伝わってくるのが嬉しいのであります。
考えてみれば、本作は作者の戦国ものでは初めて、武将個人ではなく、一族が主人公となる作品。その血の繋がりで結ばれた者たちを描くのに、その根本とも言うべき結婚から始まるのは、むしろ当然かもしれません。
そしてその先に描かれるのは、作者が得意とする夫婦の、家族のありようではないでしょうか。
今回は二人の間に信幸・幸村ら子供が誕生ところで終わりましたが、それもまた象徴的と感じます。
(ちなみに昌幸の妻、信幸と幸村の母が宇多頼忠の娘ということは、あの人物とも因縁が生まれるわけで……その点も今から楽しみなところです)
そしてもう一つ楽しみなのは、作品の舞台です。
本作の舞台になるであろう関東甲信越はこれまでの作者の戦国ものでは描かれてこなかった未知の地域。それはとりもなおさず、未知の戦国武将たちが登場し、未知の戦が待っているということにほかならないのですから。
家族の物語と、未知の世界の物語と――新たな切り口で描かれる重野戦国史、楽しみな作品がまた一つ、なのであります。
『真田魂』(重野なおき ヤングアニマルDensi連載)
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