漫画版『夢源氏剣祭文』連載再開!
漫画版『夢源氏剣祭文』が、再びの復活を遂げました。小池一夫の小説を原作に、皇なつきが漫画化したものの『コミックJIN』『サムライエース』と掲載誌の二度の休刊により連載が途絶していた本作が、角川書店のWebコミックサイト「コミックウォーカー」で連載される運びとなったのであります。
藤原秀郷の娘として生まれながらも、数奇な運命の果てに千年の魔鬼と化す運命を背負わされ、幾多の年を生きることとなった少女・茨木。
袴垂保輔、藤原純友といったまつろわぬ者たちと交流しながらも彼らを失い、長き眠りについた彼女が目覚めたのはそれから数十年後、その頃都では鬼の出没の噂が流れ……
と、いわば第三部、最終章ともいうべき展開に入ったところで、まことに残念ながら二度目の連載中断となった本作。それが今回復活したのですが、嬉しいどころのお話ではありません。
今回コミックウォーカーに掲載されたのは、連載復活の1話に加え、その前の回・前の前の回に当たる単行本未収録分の2話であります。
眠りから覚め、都をさまよう茨木が出会ったのは、かつて山姥の下で姉弟のように暮らした金太郎=坂田金時。鬼によって子供たちが殺される夢を見た彼は、山を下り、武士となっていたのであります。
再会を喜び、山に帰ろうという言葉を金時に拒絶され、孤独に空を舞う茨木が力尽きて墜ちた先は、藤原兼家の妻・壹子(蜻蛉日記の作者)の屋敷。
夫と疎遠となり、息子とも引き離された壹子は茨木に優しく接するのですが、かつて鬼に噛まれた耳の傷を見られた茨木は、鬼女と化して――
という、いよいよ茨木の運命がのっぴきならぬ方向に進む一方で描かれるのは、兼家が自らの手に権を集めるため、いわば自作自演で鬼騒動を作り出す姿。
その走狗となるのが源頼光であり、そうとも知らずその下にいるのが金時と渡辺綱――そう、様々な伝承や古典芸能においては、「茨木童子」と戦い、その片腕を落としたという綱であります。
この綱が本作でどのような位置を占めるのか、それは今後のお楽しみ。
しかし同僚の金時が都の子供たちのために頼光邸から食料を持ち出しているのを見逃したり、孤独感に咽び泣きながら宙を舞う茨木を目撃してその寂しさを忖度するなど、かなり好漢であることは間違いありません。
そしてもう一人、今回、人としての優しさ・暖かさを見せてくれるのは、壹子であります。
自らが強い哀しみを背負うが故、茨木の背負う哀しみを理解し、そして鬼と化した彼女を目の当たりにしてもなお、彼女を人として抱きしめる壹子。
我欲のために他者を鬼とする者がいれば、彼女のようにたとえ外見は鬼であっても人としての心を見いだす者がいる――
それは本作という物語において、そして何よりも茨木にとって、大きな救いと言うべきでしょう。
人間と、鬼と……そしてその狭間に立つ茨木の物語は、いよいよ佳境。この漫画版がそれを今度こそ最後まで描ききることを、心の底から期待します。
『夢源氏剣祭文』(皇なつき&小池一夫 KADOKAWAコミックウォーカー連載)
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