『ぶっしのぶっしん 鎌倉半分仏師録』第2巻 戦う者としての仏、導く者としての仏
鎌倉時代を舞台とした芸術もの・美術ものかと思いきや、実は巨大ロボットもの・変身ヒーローものだった(!?)という意外な切り口に驚かされた『ぶっしのぶっしん』第2巻であります。なおも猛威を振るう地神ミズチの猛威に、来迎術で仏を降ろした仏像で挑む想運たちですが……
奥州で荒れ狂ったミズチを封じようとした際、それぞれ半身を失い、一体に融合した形で復活した仏師の少年・想運と明星菩薩。長き眠りから目覚めた想運は、かの運慶の弟子として暮らすことになります。
しかし運慶一門により再建された東大寺大仏殿の開眼供養の日、襲来したのは平家の残党・平教経によって操られるミズチ。これに対して運慶たちは、自らが彫り上げた仏像に仏を降ろし、操る来迎術で迎え撃とうとするのですが……
いうわけで、巨大生物と巨大仏像が相打ち、想運は二人で一人の菩薩に変身するという超常バトルの末、何とか東大寺を守り切った想運と運慶一門ですが、もちろんこれで戦いが終わったわけではありません。
この巻では、九州太宰府に巨大亀が上陸、さらに再び奈良は興福寺に教経が出現、ミズチとの戦いが再び繰り広げられることとなります。
ここでやはり気になるのは、想運たちが操る「仏」の存在であります。
来迎術とは単純に仏像を操る術ではなく、仏像に本物の仏を降ろして戦ってもらおうという術。つまり、登場する仏たちには確固たるパーソナリティーがあるのです。
そんなわけで今回初登場となるのは、興福寺といえばやっぱり……の阿修羅と仁王(金剛力士)なのですが、どちらも、ああなるほどなあと納得したり可笑しくなったりなキャラクターでありました。
そんな仏たちの存在もあって、作品のムードは今回も比較的ユルいのですが、しかし物語はなかなかにハード。
一門の中ではほぼ唯一来迎術を使える「大人」である運慶は遠く鎌倉におり、いま奈良で戦えるのは湛慶と想運を筆頭に、少年少女たちのみ。
実力的にも人間的にも未熟な少年少女がいきなり戦いに巻き込まれて……というのも、巨大ロボットものにしばしば見られるシチュエーションですが、今回その中でクローズアップされるのは湛慶の存在であります
運慶の長男として申し分のない実力を持ち、父に代わって一門を率いるクールな湛慶。しかしその内面では父の存在に、そして新たに現れた天才ともいうべき想運に対するコンプレックスを抱えていた――
という展開も定番ではありますが、しかし感心させられたのは、そこからの解放に至るまでの描写。
本作では戦う者としての性格が強い仏が、本来の役割とも言うべき導く者としての姿を見せ、そして立ち上がった湛慶が仏を操って行うのは……本作ならではの人間と仏の関係性、そしてその仏が持つ性格・役割がかっちりとはまった、美しいクライマックスでありました。
一つの山を越えて成長した湛慶、そして想運ですが、しかしそもそも想運の過去/正体もまだほとんどわからない状態であり、物語の方はまだまだ謎だらけ。
ということはすなわち、これからの楽しみも多いわけであり……まだ少し先になりそうな第3巻が待ち遠しいのであります。
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