『メテオラ』弐 ついに動き出す「混沌」と「魔星」たち!
獣に変化するという呪われた運命を背負わされた青年・豹子頭林冲を主人公とする琥狗ハヤテの変格水滸伝『メテオラ』。最初の単行本にはナンバリング表記がなかったため少々気をもみましたが、もちろん取り越し苦労で、ここに第2巻が登場であります。
赤子の頃に王進将軍に拾われ、彼の庇護の下、人間として、武人として逞しく成長した林冲。しかし彼には尻尾があり、そして感情が高ぶった時に豹の頭を持つ(まさしく豹子頭!)獣人に変身するという秘密がありました。
そんな彼が知り合った不良坊主・魯智深もまた、獣人に変身する力を持つ――魔星(メテオラ)を背負った者。思わぬ同志の出現に喜ぶ林冲ですが――
しかし、そんな林冲が暮らす開封府に迫る文字通りの魔の手。奇怪な「混沌」の影が王進の同志・関勝を襲い、そして王進にもその魔手は迫ることとなります。
林冲と同じく魔星を持つ者を狙う奇怪な怪人、その名は高キュウ。そしてその手足として暗躍するのは殿帥府大尉・高廉……!
と、原典ファンであれば半分やっぱり、半分ビックリの展開で始まるこの第2巻(さらに高衙内もまた、原典とは全く異なる姿で登場)で描かれるのは、王進を、林冲を襲う悲劇の数々。
時期こそ違え、原典冒頭でそれぞれ高キュウにより苦しめられることとなった二人。本作ではそれを巧みにアレンジして描くこととなります。
この林冲の悲劇は、およそ水滸伝物語であればほとんどあらゆるバージョンで描かれるだけに、水滸伝ファンにとっては極端な話、見飽きたものとなりかねないのですが――
しかし最初に述べたとおり、魔星という全く異なる要素を持つ本作で描かれるそれは、大きく異なる……すなわち、未知の物語となります。
そしてこの巻のクライマックスとなるのは、もちろんその悲劇であります。
王進の計らいにより林冲が滄州に向かった後に、王進の屋敷を襲う高廉。しかし林冲は子供の頃から親しんできた人々が次々と倒れるのも知らず……
と、実はこのクライマックスに主人公が居合わせないのですが、そこに魯智深が駆けつけて……という展開が実に熱い。
特に、彼がある人物の最期を前に見せる姿は、「獣人」という本作最大の特長をフルに生かした、一種変身ヒーローものの美学すら感じさせる名シーンでありました。
そして野猪林のくだりを経て、林冲と魯智深の前に現れる新たな魔星。いきなり大胆な格好で現れた彼の正体は――
本作ならではの要素も全開となり、いよいよ本格的に動き出した物語。隔月掲載ゆえ、次に単行本にお目にかかれるのがおそらく一年後であろうことだけが、何とも残念であります。
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