唐々煙『曇天に笑う 外伝』中巻 急展開、「その先」の物語
本編終了、アニメの開始と終了を経ても、なおも人気が留まらない『曇天に笑う』の外伝の中巻であります。大蛇(オロチ)を倒し、千年以上にも渡る因縁に決着をつけ、平和を取り戻したはずの曇三兄弟。彼らの前に現れた新たなる敵とは――
天火が妃子とともに旅立ってから三ヶ月、それなりに平和に暮らす空丸と宙太郎、錦の前に現れた影。それは、大蛇に似た鱗を全身に持つ者たち――大蛇細胞の人体実験の被験者たちでありました。
政府によって極秘裏に研究され、かつて天火がその身に移植された大蛇細胞。大蛇の消滅とともに終わったと思われたその研究が、今もなお、どこかで行われている――
兄と同じような苦しみを他の人間に味合わせぬため、空丸・宙太郎・錦、それにかつての対大蛇特殊部隊「犲」の隊員・武田は、実験施設を訪れるのですが……
上巻が、後日談・前日談・本編の補完という、いかにも「外伝」な内容であったのに対し、この中巻は、一気に「続編」と言っても良いような、その後の物語に突入した印象であります。
しかし、大蛇と曇一族の戦いを描いてきた一連の物語を、曇クロニクルと言うとすれば、それは大蛇が滅んだことで結末を迎えたということができるでしょう。
その先の戦いがあるとすればそれはまさしく「外伝」と言うべきでありましょう。
(外伝といえば、それぞれライバルとヒロインとも言うべき位置づけにありながら、本編では今ひとつ目立てなかった感もある武田と錦が、それぞれに過去の物語や見せ場が描かれているのも嬉しいところであります)
……と、言葉の解釈をいじくり回している間もなく、物語は次々と急展開を迎えることとなります。
大蛇実験を続けている者は何者なのか。解散したといえ、「犲」はこれを座して見ているのか。旅だった天火は、姿を消した牡丹は。そして、白子は――
本当にあと一巻で終わるのか、と思ってしまうほどの盛り上がりを迎える本作。
ただ一つ望むのは、本編がそうであったように、誰一人欠けることなく、物語を笑顔で終えて欲しいと――いや、本編で笑わぬまま消えた者がいたことを思えば、今度こそ彼にも笑って欲しいと――そうう思ってしまうのはファンのわがままかもしれませんが、しかし偽らざる心境であります。
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