『コンクリート・レボルティオ 超人幻想』 第1話「東京の魔女」
超人たちが活動する神化41年、喫茶店でウェイトレスとして働く魔女っ子・星野輝子の前に、「超人課」の青年・人吉爾朗が現れる。彼に頼まれ、店で行われるある取引を妨害する輝子だが、客の一人がS遊星人の正体を現す。さらに正義の巨大超人グロスオーゲンまでもが出現、超人同士の戦いが始まる……
先日紹介した小説『超人幻想 神化三六年』と世界観を一にする……というよりこちらが本編と言うべきアニメ『コンクリート・レボルティオ 超人幻想』がスタートしました。
舞台となるのは様々なタイプの超人たちが実際に存在する「神化」40年代の日本――すなわちパラレルワールドの物語。
しかしそこで描かれるのは、あくまでも現実の、なかんずく「昭和」という時代の合わせ鏡……というのは以前『神化三六年』の雑誌掲載時の紹介で述べましたが、それゆえこのブログでも本作を紹介させていただく次第です。
さて、その第1話である今回ですが、内容的にはかなり盛りだくさんな印象。
レギュラーキャラ(特に爾朗と輝子)と基本設定の紹介、地球侵略を狙うS遊星人の陰謀、巨大超人グロスオーゲンの謎、今後の物語全体に通じる謎の提示……と、ざっとこれほどの要素が投入されているわけですが、それを1話の30分弱の中に綺麗に収めて提示されるのは、これはさすがというべきでしょう。
もっとも、見ようによっては一点目――特に本作ならではの特異な世界観の提示は、特に言葉にして描かれることはほぼなく、あっさり目に見えるかもしれません。
しかし、例えば「様々な超人たちが存在する世界」という点では、今回だけで巨大宇宙人二種、魔女っ子、妖怪変化、変形ロボと盛りだくさん。さらにそれらが「現実」の街中に出現しても、さまで驚くわけではない人々の姿に、世界観は如実に現れていると言えるでしょう。
そしてもう一つの「昭和」と言うべき神化の世界観については、時折、昭和生まれの私にとっては懐かしいランドマーク――今回で言えば渋谷五島のプラネタリウム――や、当時の流行曲をさらりと出すことで提示。
全体的なビジュアルは非常にポップな印象を受ける本作ですが、それがノスタルジーをいい意味で中和して、近過去、かつてあったかもしれない過去をうまくビジュアライズしていたと感じます。
そして物語の方は、鳥人的フォルムの巨大ヒーロー・グロスオーゲンと、人間に化けてある意図を秘め科学者に接近するS遊星人との対決がメインとなるのですが、これが物語展開や動き、BGMまで含めて、実に「らしい」内容となっているのが楽しい。
(かのウルトラマンが、企画段階ではより怪物めいた、鳥人的デザインであったことをご存じな方も多いと思います)
そこに魔女っ子たる輝子や、爾朗が操る変形ロボ・エクウス(このメカだけあまりに未来的なデザインなのは少々違和感は感じますが)が乱入してのアクションも本作ならではのものではありますが、しかしそこからさらに、本作ならではの一捻りが待っています。
主人公たる爾朗が属する政府機関「超人課」。その任務は、正義の超人を助けて悪の超人を倒す――今回のグロスオーゲンとS遊星人のように――のではなく、超人の確保と保護となります。
それでは爾朗が保護する相手は、というのが今回のキモかと思いますが、正直なところ、いきなり最終回的な展開に驚かされつつも、そこに爾朗なりの超人への、正義への想いが透けて見える……というのは考えすぎでしょうか。
そしてもう一つ最大の捻りは、本作が、少なくとも今回は、二つの時制を行き来して物語が描かれることでしょう。メインとなるのは、爾朗と輝子が出会った神化41年――しかしそれと並行して描かれるのは、その5年後、神化46年の二人の姿であります。
5年間のうちに二人に、爾朗に何があったのか……ある意味結末を先に見せての物語は、我々視聴者に、一定の着地点を見せて一種の安心感のようなものを与えつつ、「そこ」に至るまでの経緯で興味を大いにそそるもの。
本作のような何が飛び出してくるかわからない物語においては、このスタイルは、なるほど想像以上に似合うように思います。
個人的にはこの未来はある程度想像がつくものではありましたが、しかし先に述べたとおり、爾朗の心に超人への、正義への想いが生き続けていることを思えば、それまでの経緯が大いに気になるところ。
これからいかなる超人を、超人が存在する世界を、そしてそれを通じた「現実」像が描かれるのか、期待しましょう。
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コメント
ウィキペディアにも書かれていますが、元々はアメリカのヒーローが現実世界にいたら・・・というSF小説「ワイルドカードシリーズ」にインスパイアされて會川 昇さんが書かれた作品だそうで・・・。ちなみに「ワイルドカードシリーズ」は赤狩りや公民権運動という米国の歴史にヒーローが絡んでいきますが、このアニメでは日本の歴史にかれらがどう絡むか楽しみです。
投稿: ジャラル | 2015.10.05 23:05
ジャラル様:
その他にも『ウォッチメン』や『マーベルズ』の要素もありますね。
この作品もバリバリに歴史が絡んでくるはずですので、60年代の日本史を予習しておいた方がよいかもしれません(笑)
投稿: 三田主水 | 2015.10.06 00:23