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2015.10.11

『牙狼 紅蓮ノ月』 第1話「陰陽」

 物の怪・火羅(ホラー)の跳梁により人々が苦しめられていた平安の都に、人知れず火羅と戦う魔戒騎士・雷吼と魔戒法師・星明がいた。美しい仏を彫り上ることに執念を燃やす仏師・順慶は、火羅に取り憑かれて次々と女性を襲う。順慶が変化した仁王のような火羅・閻剛を、黄金騎士の刃が断つ。

 魔界から現れ、人間の心のネガティブな部分・陰我に取り憑く魔物・ホラーと人知れず戦う、獣面の黄金の鎧をまとった戦士――魔戒騎士の戦いを描く『牙狼 GARO』。
 丁度10年前にスタートし、深夜特撮番組としては異例の長期展開となったシリーズの最新作はアニメ、それも平安時代(を思わせる世界)を舞台とした作品、それもシリーズ構成は會川昇と井上敏樹ということで、このブログ的にも見逃せないところであります。

 眩く輝く(本当に光っている)光宮を中心に貴族たちが華やかに暮らす一方で、夜になれば奇怪な物の怪・火羅の群れが出没し、様々な怪異が庶民を苦しめていた平安の都。
 そこで人知れず火羅を狩るのは、黄金の鎧を持つ若き魔戒騎士・雷吼(らいこう)と従者の金時、そして年齢不詳の美しき魔戒法師・星明(せいめい)でありました。

 修理中の羅城門を襲い、大工たちの精気を喰らう火羅の群れを一蹴した彼らが次に挑むは、夜歩く仁王像の怪であります。
 仁王像を鎮めようと都一の仏師・順慶が作った胎内仏も、像に収めた途端に崩れ落ちる有様、いやそれどころか、それをきっかけに美しい菩薩像を彫るという想いに取り憑かれた順慶が火羅化してしまうことに……


 というわけで、舞台を平安時代に移しても、やはり人の陰我を喰らって怪物化するホラーと、それを狩る黄金の騎士という牙狼の基本設定は健在の本作。
 その一方で、今回さらりと語られた、貴族たち身分の高き者は陰陽師によって守護(つまり陰陽師も火羅に対処できる)されているという、この時代ならではの設定が本作ならではの独自性かと感じます。

 その加護から漏れた人々を守る者こそが魔戒騎士たる雷吼の務め……となりますが、雷吼がまず間違いなく源頼光をモデルにしていると思えば、彼と史実の上で上下関係にあった藤原道長が、貴族サイドのトップ――庶民を切り捨てる側として――存在しているのも、興味深いところではあります。
(しかし雷吼や星明といったネーミングは、いかにも牙狼らしくちょっと楽しい)

 また、『牙狼』の物語としては、冒頭で黄金の魔戒騎士ガロの名は絶えて久しいはずと言われている点や、ガロの変身アイテムであり相棒でもあるはずの魔導輪ザルバが普段石化しており、星明に封印が解かれた時のみ復活できる(変身できる)点も気になります。


 と、本作ならではの面白さはもちろんあるのですが、第1話を見た限りでは、もう少し平安らしさ、時代ものらしさを前面に出していくか、さもなければもっとはじけた描写に振っても良かったかな、という印象があったのも事実。

 もちろん、個人的には前者に振れて欲しいところではありますが……雷吼の屋敷のヴィジュアルなど観ると、その辺りは心配になりますし、さらに言ってしまえば雷吼と星明の戦闘スタイルのコスチュームデザインも、牙狼らしいといえばそのとおりなのですが、平安ものとしては……という印象があります。
(雷吼の普段のコスチュームなどはかなり良いのですが……)

 と、この辺りは野暮な時代もの好きのツッコミでしょう。最近の深夜アニメとしては比較的長めとなる2クールの間、本作で何が描かれるかは、素直に楽しみにしたいと思います。



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