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2015.10.12

『コンクリート・レボルティオ 超人幻想』 第2話「『黒い霧』の中で」

 変身能力を持つイタズラ好きのオバケ・風郎太を捕まえた爾朗と輝子。その頃、永田町周辺に謎の黒い霧が発生、国会議事堂を閉じ込めてしまう。風郎太の言葉から黒い霧の正体を知り、対処に当たろうとする超人課だが、超人課に興味を持った風郎太は、単身黒い霧の中へ……

 オバケの風郎太紹介編である今回、タイトルの「黒い霧」でのけぞってしまうのですが、しかし本編の方は、ノスタルジックな切なさと、子供の持つ正義感の両義性を描く、実に濃厚な味わいのエピソードであります。

 神化41年、銀座のデパート屋上で売られていた見慣れぬ美しい甲虫を、鳥に変化して逃がした風郎太。しかし彼はその直後に現れた黒い霧にまかれ、その中で不思議な声から、この霧の中に潜むのがタルタロス蟲人なる存在だと教えられます。
 折しもこの黒い霧は各地に出没、ついには国会議事堂をも包み込み、公共保安隊の超人(こういう形で国の超人がいるのか、ということと、どこかで聞いたようなネーミングにニヤリ)も全滅させられた状態で、ようやく超人課にも出番が回ってくることとなります。

 一度は警察から逃げ出したところを爾朗たちに捕まった風郎太がタルタロス蟲人の名を口にしたことから、爾朗の養父であり(どこかで聞いたような名前×2の)秘境探検家・人吉孫竹を通じ、対抗手段を手にする超人課。
 それを知った風郎太は、興味を持った超人課に加わるため、その対抗手段を手に、黒い霧に飛び込んでいくのですが……

 風郎太の前に現れ、友達となった美少女・カムペは何者か。タルタロス蟲人の真意は。風郎太の行動の結果は。そして風郎太は超人課に入ることができるのか……物語の結末は、7年後の神化48年に明かされることとなります。


 タイトルの「黒い霧」のモデルは、神化ならぬ昭和41年に政界を騒がせ、衆議院解散に繋がった一連の政権与党の不祥事、「黒い霧事件」にあることは間違いないでしょう。
 このタイトルを見た時は、この事件をモチーフとした政界を舞台にした物語なのかな、と勝手に思いこんでいましたが、まさか文字通りの黒い霧が登場(不祥事が背景にあることは間違いないのですが)するとは意表を突かれました。

 それでは物語の中心にあるものはと言えば、その黒い霧に潜むものと、そこに飛び込んだもの――タルタロス蟲人と風郎太である、と言ってよいでしょう。

 遙かな昔、地球上で繁栄した昆虫の末裔である昆虫人類・タルタロス蟲人。ある理由で姿を消した彼らがどこに消え、そして何故「いま」姿を現したのか……それも面白いのですが、しかし何よりも興味深いのは、人間サイドの超人課による、彼らが「超人」か「侵略者」かの判断でしょう。

 地球の先住者たる者たちが――人類にとっては友好的とは言い難い形で――再び姿を現したとき、いかに対するべきか? あるいはさらに突っ込んでしまえば、侵略者と見える者にも理はないのか、全て滅ぼしてよいのか……
 かつて『ウルトラセブン』(S43年)や『海のトリトン』(S47年)で描かれた問いかけは、本作でもまた、形を変えて描かれることとなります。

 そして風郎太は、人間とも妖怪とも異なる(本作における妖怪は、人間とは別種の形態を取る知的種族を指す模様)オバケ。彼は子供たちと遊ぶことが大好きな存在であり、そのメンタリティーもまた子供と同様の存在ですが……しかしオバケが変わらない一方で、人間の子供はすぐに成長し、子供時代を捨て去っていくのです。

 神化48年に様々な形で描かれるのは、そのどうして大人に「ならないのだろう」という、変わらないことの切なさ、悲しさであり(その姿は、S41年に漫画連載を終了し、S48年に後日譚的な漫画、いや劇画が発表されたあるオバケを思わせます)――そしてもう一つ、幼い正義感の残酷さ、であります。

 正義と悪を割り切り、「正義の味方」超人課に加わるため、その代行者として振る舞った風郎太の行動が何をもたらしたか……今回のエピソードのラストで(今は超人課の敵となったという)爾朗は、それをほとんど容赦なく断罪します。
 しかし本作は同時に、決してその正義感を単純に否定しては終わりません。爾朗がかつて、風郎太の正義感の中に何を見ていたか、そして何を見ているか……神化41年と神化48年を通じ、人間とオバケと蟲人を結び、結末に語られる「それ」には唸らされるばかりなのです。

 それもまた、爾朗という人間の抱える、一つの超人幻想と言うべきでしょうか。


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コメント

今回の事件の発端である緑色のカブトムシを業者は『10万円』という給料4か月分の破格の値段で売っていました。1965年度の大卒の某社入社者の初任給が25000円前後ですから、これは当時としては破格の値段ですな。

もっとも今年7月にインターネットオークションで落札された世界最大のカブトムシ「ヘラクレスオオカブト(パチセラスという珍しいもの)」が300万円ですから、この業者のオジサンは割とまともな値段で売っていたようです(笑)。

投稿: ジャラル | 2015.10.14 23:15

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