『コンクリート・レボルティオ 超人幻想』 第3話「鉄骨のひと」
世間を騒がせる連続爆破事件。しかし超人事件専門の刑事・柴来人は、事件の陰に超人課の隠蔽工作を察知する。独自に調査を開始した来人の前に現れた少女・美枝子……しかし彼女の正体は、戦時中に日本軍が開発した女性型ロボットだった。超人課と激しく激突しつつも彼女を追う来人だが……
レギュラーの紹介編もおそらくラストの今回の中心となるのは、超人課とはライバル関係の刑事・柴来人。かつて悪の組織に命を奪われたものが、人格と記憶を人型ロボットに移植されたという、タバコの代わりに歌を口ずさんだりする設定の青年であります。
さて、神化42年の現在、そんな彼が追うことになるのは各地を騒がす爆弾事件。実はこの事件、爆破とは超人課の隠蔽工作による偽り(なんという豪腕解釈)、真相は八束重工の社員を狙った襲撃事件でありました。
その優れたロボット技術を軍事に転用、輸出している八束重工、その社員たちはトランク型の警備用ロボットを携えていたにもかかわらず、ロボットは一撃で破壊。カメラにもほとんど映らぬその正体と目的は……
と、単独捜査に当たっていた来人が出会ったのは、おさげも愛くるしい少女・美枝子。しかし超人課もその行方を追っていた彼女こそは、先の戦争中に軍が生田研究所(もちろんモデルはフィクションではおかしなことばかり研究していることになっているあの研究所)で開発した人型ロボット――の一体。
男女一対で開発され、敵地で合体(そして爆発?)する機能を持たされた彼女は、パートナーの半田を求めて今復活したのです。
しかし半田は戦時中にグアムに送られ、そこで消息を絶たことを知る由もなく、ただ彼の面影を求めて彷徨う美枝子。共に合体を阻もうとしつつも、彼女を機能停止させようとする爾郎と、いつしか彼女を守る立場に転じていく来人。再開発の始まった新宿西口で繰り広げられる二人の対決の行方は――
と、かつての等身大ロボットヒーローたちを思わせるキャラクターが登場する今回。ここで描かれるのは、それらの作品でも描かれてきたテーマ……人間に似せて作られ、人間の心を持った機械は人間なのか、そして機械であったとしてもそこに正義は宿るのか、という問いかけではないでしょうか。
Aパートの終了直前、大ダメージを受けた来人の電子頭脳に「チョウジンジャナイ ニンゲンダ」という言葉が表示されます。
人間としての感情と記憶――すなわち「心」を持ちながらも、体は冷たい鉄の機械である来人。なるほど、彼は生物学的な意味で人間ではありませんが、しかし人間の心と過去を持つ彼を超人と――ここではもちろん「機械」と同義ですが――呼ぶことは果たして正しいことでありましょうか。
一方、人間そっくりに作られながらも、プログラムの命ずるままに、パートナーを求めて事件を引き起こす美枝子は、やはり機械と呼ぶべきなのかもしれません。
しかしその姿は、一途に相手を恋い慕う者の姿であり――そこに我々自身と同じ心の動きを感じてしまうのは、これは輝子だけのことではありますまい。
そして、そんな形で私たちを悩ませる物語は、5年の時を経た神化47年において、さらに複雑な様相を呈することとなります。
グアムから帰還した兵士とともに密かに帰還した半田。来人は、自分自身の正義に基づき、その彼と美枝子を合体させようとします。冬季オリンピックにおいて二人を爆弾として使い、テロを起こすために……
果たして5年の間に来人に何があったのか、それは現時点ではわかりません。しかしそこにあるのは、美枝子を人間として想い、扱おうとしていた彼とは全く異なる姿。そしてついに合体した二人は、さらに皮肉な現実――もう一つの正義の在り方を、来人に、我々に突きつけるのであります。
一体誰が人間だったのか、そして誰が正義なのか、いや誰の正義の「正しい」のか、「正しかった」のか……その問いかけは、これまでも本作で語られてきた問いかけと重なり――そして超絶作画の爾郎と来人の激突の中にその答えは呑まれることになります。
本作で描かれる超人の、正義の在り方は、決して不変ではなく、それどころか様々に移ろうものであります。
なかなか初見ではわかりにくいかもしれない過去と現在、現在と未来を交錯させる本作の構成ですが、しかしその可変と不変を描くには、この手法しかないと……今回のラストからは改めて感じさせられたのも、一つの発見であります。
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