« 町井登志夫『倭国本土決戦 諸葛孔明対卑弥呼』(その二) 卑弥呼の国、孔明の国 | トップページ | 梶川卓郎『信長のシェフ』第14巻 長篠への前哨戦 »

2015.11.27

『牙狼 紅蓮ノ月』 第7話「母娘」

 安倍晴明邸を襲う怪現象。この事件の解決を藤原道長から依頼された星明はしぶしぶ引き受け、一人熊野に向かう。残された雷吼は安倍晴明から星明の過去を聞かされる。幼い頃から強大な力を持っていたが故に、両親を失った星明。そして熊野に眠るのは星明の母が変化した炎羅だという……

 雷吼は頼光ですが、星明は晴明ではないという少々ややこしい(?)本作。星明と晴明の関係は以前語られましたが、今回は星明のより詳しい過去が明かされることとなります。

 道長の使者として晴明邸を訪れた正宗・保昌・頼信のトリオ。晴明と酒を交えて話す中、突然正宗が何者かに取り憑かれて変貌、さらに屋敷の外には何者かが迫る気配が……その気配が「きよめ」と呼ばわるのを聞いた晴明はその正体に思い当たります。

 さて、星明の方はと言えば、自分の式神・通称「式にゃん」を操り、雷吼が寝ている隙に小銭を盗むというセコい行為を実行中。……が、当然ながらバレて雷吼と金時に雷を落とされているところに、道長から晴明邸の怪事の解決するよう、依頼を受けることになります。

 実家を毛嫌いしている星明は嫌がりますが、相手が道長であれば多額の報酬が期待できる。いやそれは表向き、怪異が「きよめ」――自分の真の名を呼んでいたことを知ったことから、星明は依頼を引き受けるのでした。ただし、この件は雷吼と関係なく一人でやりたいと言い残して……

 一人残された雷吼は、稲荷神たちから、星明の母・葛子姫は炎羅と化しており、そして魔戒法師だった星明の父・信太丸はそれと期を同じくして行方不明となったと聞かされます。その炎羅退治に名乗りを上げる雷吼ですが、一人では何もできまいと一笑に付され、今度は晴明のもとに向かい、そこで星明の過去を聞かされるのでありました。

 安倍家の父と賀茂家の母の血を引き、幼い頃から炎羅を封じるほどの力を持っていたことから、最強の陰陽師として将来を嘱望されていた星明。
 しかしその力を危惧した晴明の悪い予感は当たり、晴明を狙って無数の炎羅が出現。葛子姫はその身に全ての炎羅を集め、そして彼女を愛する信太丸は、自分の命を投げ出して妻と炎羅を封印したのであります。そしてその炎羅は晴明によって熊野に封印されたのですが……この顛末を全て見ていた晴明は安倍の家を継ぐことを拒否し、このような悲劇が二度と起きぬよう、炎羅と戦うことを決意したのでありました。

 さて、熊野では道満がこの炎羅の封印を解かんとする最中。そこに現れた星明は自らこの炎羅の封印を解くと言い出します。果たして復活した母の炎羅を倒そうというのか、解き放とうというのか……そこに晴明の力を借りてザルバの封印を解いてもらった雷吼も駆けつけ、事態は一触即発に。

 封印を解こうとする晴明を止めようとした雷吼に襲いかかる、道満の操る炎羅。その間に星明によって封印を解かれた炎羅は、巨大な龍めいたその姿を現すのですが――しかし窮地に陥った雷吼の下に星明とともに駆けつけたのは、星明の牛車と一体化したその炎羅。 星明の目的は、炎羅を魔導具にして、炎羅と戦う自分たちの力とすること――その凄まじい力を借りた雷吼は、一撃で道満の炎羅を粉砕するのでありました。


 というわけで、今回も道満が強力炎羅の封印を解こうとしたことがきっかけとなる物語でしたが、そこに星明の過去が絡み、さらに星明の真意がラスト近くまで見えないのが相まって、なかなかに盛り上がりました。
 炎羅と化したとはいえ、母を魔導具にして戦いに使おうというのは判断が分かれるところですが、その点も含めて、星明の「人は光と闇の間を揺れ動く」という言葉なのでありましょう。

 これに対して、自分には闇しか見えないという道満。ある意味非常にわかりやすい悪役としての言葉ですが、しかし彼がそれだけの人間とは到底思えないわけで……さて。



関連記事
 『牙狼 紅蓮ノ月』 第1話「陰陽」
 『牙狼 紅蓮ノ月』 第2話「縁刀」
 『牙狼 紅蓮ノ月』 第3話「呪詛」
 『牙狼 紅蓮ノ月』 第4話「赫夜」
 『牙狼 紅蓮ノ月』 第5話「袴垂」
 『牙狼 紅蓮ノ月』 第6話「伏魔」

関連サイト
 公式サイト

|

« 町井登志夫『倭国本土決戦 諸葛孔明対卑弥呼』(その二) 卑弥呼の国、孔明の国 | トップページ | 梶川卓郎『信長のシェフ』第14巻 長篠への前哨戦 »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 『牙狼 紅蓮ノ月』 第7話「母娘」:

« 町井登志夫『倭国本土決戦 諸葛孔明対卑弥呼』(その二) 卑弥呼の国、孔明の国 | トップページ | 梶川卓郎『信長のシェフ』第14巻 長篠への前哨戦 »