このブログの2015年を振り返って(下半期篇)
ブログ記事で(の)2015年を振り返る後編、下半期分であります。比較的近い時期のことが多くなりますが、意外と忘れているものではあります。
7月
この月は何といっても歌舞伎『阿弖流為』鑑賞。劇団☆新感線の『アテルイ』の歌舞伎化ですが、あまりの見事さに二週連続で見てしまったほどであります。これこそは舞台で見るべき作品でしょう。
歌舞伎NEXT『阿弖流為』 世に出るべくして出た物語
印象に残った作品は4点。最後の作品は、相当昔の作品ではありますが、偶然手にした今この時に相応しい内容でした。こういうことも少なからずあるものです。
越水利江子『うばかわ姫』 真実の美しさを生み出すもの
鏑木蓮『イーハトーブ探偵 山ねこ裁判 賢治の推理手帳II』 真に裁かれた者の名は
木下昌輝『人魚ノ肉』 人魚が誘う新撰組地獄変
ほんまりう『漱石事件簿』 漱石が見た近代日本の陰
8月
この月はブログ記事というより関連サイトのことですが、大年表の大年表を更新。昔から一つの年表の中に様々な作品のことを並べるのが大好きだったので、こうした企画は本当に楽しい。しかし不思議なのは、本業が一番忙しいはずの8月の自分に、こんな手間のかかる更新をする暇があったことですが……
大年表の大年表 更新
特に印象に残ったのは両極端な二点。前者については好企画だっただけに、ぜひ復活して欲しいものですが……
『江戸ぱんち 夏』 アベレージの高い市井もの漫画誌
武村勇治『天威無法 武蔵坊弁慶』第5巻 激突! 突き抜けた力を持てる者
9月
この月はやはり舞台『MOGURAYA 百年盂蘭盆』鑑賞。小劇場での観劇は本当に久し振りでしたが、しかしその距離感と作品のムードが良く合っていました。過去作もいずれ必ず取り上げます。
『MOGURAYA 百年盂蘭盆』 舞台で帰ってきたもぐら屋!
そしてもう一つ、これは本編が出る前のプレビューを題材にした苦し紛れな記事でしたが、やはり『桜花忍法帖 バジリスク新章』の存在は大ニュース。しかし現物は、この時点での予想を遙かに上回る色々な意味でとんでもない作品でした。
山田正紀『桜花忍法帖 バジリスク新章』刊行!?
印象に残ったのは以下の二作品。全く趣向も題材も異なる作品ですが、奇しくも物語の力を描いたという共通点があります(私がそういう作品が大好きだ、というのはもちろんありますが)
會川昇『超人幻想 神化三六年』 超人を求める人々の物語
渡辺仙州『文学少年と運命の書』 物語の力を描く物語
10月
そしてこの月はアニメが二本スタート。どちらもいわゆるヒーローを扱いつつも、片や昭和を思わせる架空史もの、片やファンタジー調の平安ものという毛色の変わった作品(そしてどちらも會川昇脚本作品)であります。
毎週二作品のレビューで記事が書けて助かる、と思いつつも、コンレボの方はあまりのボリュームに脱落状態……いずれまた。
『コンクリート・レボルティオ 超人幻想』 第1話「東京の魔女」
『牙狼 紅蓮ノ月』 第1話「陰陽」
印象に残った作品は4つ。我ながら見事なまでにバラバラの作品であります。
北崎拓『ますらお 秘本義経記 波弦、屋島』第1巻 もう一人の「義経」、もう一人のますらお登場
谷津矢車『曽呂利! 秀吉を手玉に取った男』 「善」に抗する者の名
篠原景『春は遠く 柏屋藍治郎密か話』 「生きにくさ」を抱きしめて
熊谷カズヒロ『モンテ・クリスト』第4巻 待ち、しかし希望した末にあったもの
11月
この月は大きな出来事はありませんでしたが、『衛府の七忍』で飛び出した「テヘペロでやんす」は、個人的には今年の流行語大賞です。あまりに使い回しが良すぎる。
山口貴由『衛府の七忍』第1巻 新たなる残酷時代劇見参!
もう一つ、来年の大河ドラマを踏まえてこれはこの後本格化するであろう真田ものの児童小説の第一弾として、あえて「物語」を描いたこの作品には感銘を受けました。
奥山景布子『真田幸村と十勇士』 「幸村」の「物語」が持つ意味
その他印象に残ったのは以下の三作品。『鬼神の如く』は、勝手に優等生のイメージを持っていた作者の意外な伝奇センスに驚きました。
朝松健『魔道コンフィデンシャル』 邪神対邪神、人間対邪神、人間対人間
『鬼神の如く 黒田叛臣伝』(その一) 不可解な御家騒動を彩る要素
『鬼神の如く 黒田叛臣伝』(その二) 叛臣か忠臣か、鬼神か聖者か
廣嶋玲子『鵺の家』 呪いへの依存という地獄の中で
12月
そして今月は、やはり二つの商業原稿が一番の出来事(もちろん、実際に描いていたのはもっと前ではありますが)。何故か年末に出番が回ってくることが多い人間です。
武内涼『吉野太平記』の解説を担当しました
『この時代小説がすごい! 2016年版』 驚きのランキングに刮目せよ!
もう一つ、取り上げるべきは、こうすればいま『水滸伝』を描けるのか、と感心させられたこの作品。水滸伝熱がますます高まりました。
逢巳花堂『一〇八星伝 天破夢幻のヴァルキュリア』 降臨、美しき一〇八の魔星たち!
印象に残ったのは以下の二作品。今月刊行された『桜花忍法帖』下巻はいつ取り上げたものか……
矢島綾『天空をわたる花 東国呼子弔忌談 過去を呼ぶ瞳』 世の則と人の情の狭間に
山田正紀『桜花忍法帖 バジリスク新章』上巻(その一) 山田対山田の対決
山田正紀『桜花忍法帖 バジリスク新章』上巻(その二) 人間性を否定する者への怒り
以上、手間がかかる割りに面白いかどうかは我ながら疑問も残る企画でしたが、ある意味このブログの総集編ということで、個々の記事をご笑覧いただければ幸いであります。
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