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2016.01.26

『牙狼 紅蓮ノ月』 第14話「星明」

 星明が雷吼を救うことを選んだことにより、来世門は巨大な繭に押し潰され、数多くの人々が犠牲となる。それを悔やむまもなく出現した無数の素体炎羅と戦う雷吼。その頃、光宮では炎羅と化した保憲が正体を顕し、道長たちに襲いかかる。混乱の中、鎧の封印の正体と星明の真意を知った雷吼は――

 後半戦の幕開けとなる大乱戦の後編である今回は、物語の冒頭から雷吼を、牙狼の鎧を縛っていた封印にまつわる物語でもあります。

 倒壊した来世門を前に、自分のせいで多くの人が死んだと責め、その場に居合わせた晴明に、以前一度あったように鎧の封印を解いてくれと願う雷吼。しかし彼の中に焦りを見た晴明はそれを拒否、そんな雷吼の自己犠牲の精神こそが星明の危ぶむものであり、そのために星明は自分の命を削っていたのだと語ります。
 そう、鎧の封印の正体、その力の源は星明の生命力――彼女は自らの寿命を削りつつ、鎧を封印、いや雷吼を護り続けていたのです。

 と、そんな晴明を後ろから貫く炎羅の爪! と思いきや、それは身代わりの式神でしたが、彼らの周囲に現れたのは無数の素体炎羅……巨大な繭の中に潜んでいたものたちです。
 一方、光宮の内部では、炎羅化した保憲が、蝶に似た正体を顕し、触れただけで塵と化す口吻と鱗粉で、保憲の術で封じられた光宮の中の人々を次々と惨殺。繭の炎羅たちにより雷吼や晴明を足止めし、光宮を襲撃する――それこそが道満の真の狙いだったのでます。

 が、その当の道満は、光宮に駆けつけた星明の挑発にあっさり乗って人々に逃げられる始末……が、蝶嫌いの星明にとって、蝶の炎羅と化した保憲はまさに天敵、取り乱した彼女をツンデレっぽく助けたのは、前回道長に暴言を吐いて牢に繋がれていたところを兄に解放された保輔、いや斬牙であります。

 しかし流石に晴明の下風に立たされたとはいえ、保憲が変じた炎羅は強く、あっという間に斬牙も、星明も窮地に立たされることに。そこに追い打ちの精神攻撃を掛けるのは道満。星明にとって運命の男であった雷吼の心を、星明自身が踏みにじったと、彼女の闇を救う大切な光を自ら消してしまったと、陰湿に煽る彼の言葉に、絶望の淵に沈みかける星明ですが……

 しかしそれを救ったのは、意外にも彼女が連れる式神。数話前から地味にコメディリリーフとして登場しているこの式神は――喋れぬものの、言葉を体表に表示することで意思を表すのですが――星明の潜在意識の分身とも言うべき存在であります。
 そんな式神が示したのは、星明を励まし、雷吼を信じる言葉……そう、それこそは彼女の魂の言葉、心の叫びだったのであります。

 その頃雷吼はと言えば、炎羅に取り囲まれた状況だというのに、星明は人々よりも自分を選んだといまだに憤っている最中。
 しかし、彼女はより多くの人を救うたにその力を持つ雷吼を救ったのだと語る弟の頼信、そしてかつて雷吼が炎羅の闇に憑かれた時に星明がその闇を吸い取ったと教える金時の言葉に、ようやく雷吼は己の未熟さを――星明の大事さを悟るのでありました。

 今度は俺が星明を護る! その雷吼の強い想いは鎧の封印を自ら解き放ち、そこに現れたのは、より和風の鎧調となった真の黄金騎士・牙狼――素体炎羅を蹴散らし、光宮に駆けつけた牙狼と、(脇から出てきたわりに格好いいことを言う)斬牙、二人の刃は保憲炎羅を一撃で粉砕するのでした。
(そしておのれ見ておれとか捨て台詞を吐くも虚しく、星明に捕まってマウントパンチでボコられ、道摩の術で救われながらも師に口答えする道満……)

 ようやく互いの想いを真に理解した雷吼と星明。鎧の封印も解け、万事めでたし、と言いたいところですが――しかし雷吼に別れを告げ、一人去る星明。
 歩み去る星明の前に広がるのは闇――しかしその先には小さな星明かりが輝いているのでありました。


 というわけで、話の展開といい、タイトルといい、星明の身に何かが起きるのでは……と不安にさせられた今回ですが、蓋を開けてみれば、なかなかに盛り上がるパワーアップ回といったところ。
 しかし思わぬ形で星明は戦線離脱、一時のものかとは思いますが、しかしその間に二人が歩む道は……後半戦、いきなり荒れ模様であります。


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