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2016.01.02

『戦国武将列伝』2016年2月号(前編) 決戦開始! 意外すぎる関ヶ原

 早くも今日から通常営業。年を越して恐縮ですが、2015年最後の『戦国武将列伝』であります。一年の締めくくりと言うべきか、今回はなかなかに盛り上がる展開の作品が多い印象。そして新連載は下元ちえの『焔色のまんだら』が登場であります。今回も印象に残った作品を一作品ずつ紹介していきましょう。

『セキガハラ』(長谷川哲也)
 前回、ガラシャの遺した言葉により、関ヶ原での合戦は鬼門だと知った三成たち。しかし、如水のほとんど反則的な能力により、強引に東軍・西軍皆揃って関ヶ原に転移させられて……と、もう少し引っ張るかと思いきや(まあガラシャの最期があるのですから考えてみれば違うのですが)、巻頭カラーでいきなり関ヶ原開戦であります。

 が、この作品がいよいよクライマックスというところで普通の合戦を描くはずはありません。開始早々、閉鎖空間となった関ヶ原で、諸大名に襲いかかるのは奇怪な異形の怪物たち・出門頭(デモンズ)の群れ。出門頭に殺された者、あるいは閉鎖空間から逃れようとした者もまた出門頭と化し、一帯はたちまち地獄絵図に……

 ってそのデモンズか! とツッコミを入れたくなるような展開ですが、しかし突然の怪物たちとの死闘の中で、敵味方を超えた武将同士の繋がりが描かれるのはなかなか熱いのがまた心憎い。
 この状況を脱するため、司令塔を目指す三成に襲いかかる怪物化した薩摩兵の地獄車。しかしそこに立ち塞がるのは、三成とは因縁のあの男たち……という泣かせる展開で、前哨戦ながら既にセキガハラ版関ヶ原の合戦は全力疾走の印象です。


『焔色のまんだら』(下元ちえ)
 『かぶき姫 天下一の女』で芸道に自分自身の生を賭ける者の一途な姿を描いた作者の新作は、桃山時代に活躍した絵師・長谷川等伯の一代記。
 その後半生の盛名とは裏腹に、三四十代の史料が残っていない等伯ですが、本作はそれを巧みに利用して、意外な物語の幕開けを描き出します。

 というのもこの第1回で描かれるのは、天正10年6月――そう、本能寺の変。この時、京にいたと言われる等伯が変に遭遇したというのは充分あり得ることですが、しかし本作の等伯は、その混乱の中で、ある場所を一心に目指します。
 それの場所とは安土城、そしてその理由とは、かつて己を歯牙にもかけなかった天才・狩野永徳の障壁画を目に焼き付けるため……

 大望と才能も持ちながらも燻っていた等伯の心に火をつけるのにこれ以上はないほどの大火ですが、そこから何が生まれるのか、これは期待です。


『孔雀王 戦国転生』(荻野真)
 前回、ついにその姿を現した悪徳太子。長髪に髭、そして頭には茨の冠と、危険球にもほどがあるビジュアル(というか正体)の人物ですが、さて今回描かれるのは、彼とともに信長を天魔王の道に誘う「阿修羅」の正体であります。

 信長が悪徳太子、そして阿修羅と対面している間、信長と喧嘩別れした孔雀が訪れたのは奈良の興福寺。興福寺といえば阿修羅像、そしてその阿修羅像を通じて孔雀が言葉を交わすのは本物の、あの阿修羅……そして阿修羅の言葉から、シリーズファンにとっては驚くべき真実が明かされることになります。

 その真実についてはここではぼかしますが、あの戦いは既に決着がついていた!? というのは相当に衝撃的。しかし同時にさらりと語られるもう一人の阿修羅の正体を知れば、真の決着はこれからであり、そしてここに孔雀がこの時代にやってきた真の理由があるのでは……と感じます。
 ぼかしてばかりで恐縮ですが、シリーズファンとしては、この先の展開がいよいよ楽しみとなった今回です。


 以下、長くなりましたので次回に続きます。


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