長谷川明『戦国外道伝 ローカ=アローカ』第2巻 常陸に潜む新たな外道の影
川中島に出現した地獄の城・纐纈城に、加藤段蔵ら異能の外道たちが挑む超異色の時代伝奇漫画、待ちに待った第2巻であります。纐纈城攻略のための外道たちを集めるために動き始めた武田の忍び。彼らが向かった常陸で出会った、あまりに忌まわしい存在とは……
大量の血が流される合戦場に現れ、兵たちを喰らっていく地獄の城・纐纈城。信玄と謙信が激突する川中島の戦場に出現した纐纈城とその配下の奇怪な纐纈兵が将兵を拉致していく中、飄然と現れたのは絶賛就職活動中の忍・加藤段蔵でありました。
生まれつき地獄が見えるという段蔵にとっては、常人では到底敵わぬ纐纈兵も馴染みの存在のようなもの。纐纈兵を文字通り喰らった彼は、纐纈城を我が物にせんとする信玄に雇われることとなるのですが……
というわけで、開幕当初からフルスロットルで展開してきた本作ですが、この巻の冒頭で語られるのは、纐纈城の不気味な習性というべきもの。単純に(?)人の血肉を集めているかに見えた纐纈城は、しかしより優れた者を――能力が、容姿が優れた者を狙ってさらい、そしてそのための情報を、犠牲者たちから収集していたのであります。
いかに恐るべき城であろうとも、近寄らねば害はない……と思いきや、狙った者の身近まで追いかけてくるというのは、意外な恐ろしさを生み出します。
そしてそれは恐ろしさだけではなく、相手に動きを悟られることなく纐纈城を奪うために、ギリギリまで機を見て、戦力を蓄えなければならないという、シチュエーションの妙に繋がっていくのです。
さて、そんなわけで外道たちを集めるべく、隠密裏に動くことになった段蔵や武田の忍びたち。そこで本作の副主人公格的な立場の(元)小姓・五郎丸と、武田の歩き巫女・ふぶきが向かったのは、古より常世から来たモノが漂着するという常陸であります。
常陸に漂着……とくれば、ここで江戸時代等の怪奇事件に詳しい方は、目を輝かせるかもしれません。そう、あたかもUFOのような不思議な形の船――虚舟に乗った異国の女性が漂着したと伝えられるのは、この常陸なのですから。
果たしてその虚舟の蛮女の存在を住民たちから聞き、興味を持った五郎丸とふぶき。しかし、その蛮女は、この辺りの山に潜む怪人物・猿御前が連れて行ったというではありませんか。
その名の通り、猿の神霊が憑いたと伝えられ、無数の猿を操る異常の剣客・猿御前。そして彼のもとには、彼とは似ぬ美しい容姿の美少年が――
その美少年が何者か、それは予想通りの展開ではありますが、しかしそれは(このような表現はいささか気が引けますが)何という悍ましい存在か。人か神か獣かもわからぬ異貌の怪人と、ただ無言で微笑むのみの美しき蛮女の間の……とは。
しかしその異常な存在こそ、あるいは纐纈城攻略に相応しい者かもしれない。その思いから猿御膳に接近した五郎丸たちを、そして後を追った段蔵を待つものは……さらには纐纈城の使者までもが乱入し、事態は本作に相応しい大混戦の様相を呈していくのです。
この辺りの展開の詳細は伏せさせていただきますが、感心させられたのは、纐纈城側のキャラクター。その正体はこの巻の時点では不明ですが、なるほど、纐纈城の由来を考えれば、このような人物が登場してもおかしくはないとは、言うことはできるでしょう。
そしてその存在が、纐纈城の正体を探るヒントにもなるのではないかと……
もちろんこれはこちらの勝手な想像ではありますが、物語やキャラクターが道を外れれば外れるほど、その行く先が楽しみになってしまう作品に対しては、これくらいの想像は許されるのではないでしょうか。
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