『週刊読書人』で『日雇い浪人生活録』(上田秀人 ハルキ文庫)を紹介しました
最近のお仕事の紹介であります。『週刊読書人』の7月28日号で、上田秀人『日雇い浪人生活録』(ハルキ文庫)の紹介を担当させていただきました。
今回執筆の機会をいただいたのは、『週刊読書人』の「わが社のロングセラー」という特集。出版各社がタイトルの通り一社一タイトルずつ自社のロングセラータイトルを挙げ、それを作家自身あるいは評論家が解説するという毎年の恒例企画であります。
十数社分が掲載されるということで、一タイトルあたりの文章量は少ない(千文字強)のですが、しかしロングセラーというだけあって、紹介される作品は名著名作揃い、さらに執筆陣も――と、読み応え十分の企画であります。
そんな中に私が出ていくのも恐縮ですが、これまでなかなか書かせていただく機会のなかった(あってもワンオブゼム的な扱いだった)上田作品の解説、それも愛読しているシリーズということで、気合を入れて書かせていただきました。
この『日雇い浪人生活録』シリーズ、タイトル通り日雇いで暮らしてきた親の代からの浪人を主人公とした物語――というと人情とペーソスに満ちた作品のように見えますが、上田作品がそんなありきたりの展開となるわけもありません。
思わぬことから若き日の田沼意次に目をつけられた彼は、幕府の行方を左右するような暗闘に巻き込まれて――という作者の新機軸であります。
そんな本シリーズの最大の特徴は、もちろん主人公が「浪人」である点。浪人というのは文庫書き下ろし時代小説では定番の主人公の職業(?)ですが、しかし上田作品では極めて珍しい存在です。
そして単に珍しいだけでなく、本シリーズの構造においては、主人公が浪人であることに確かな意味があって――というような(これまでもこのブログで縷縷述べてき)ことを書かせていただきましたので、ご一読いただければ幸いです。
なお、7月28日号はこの企画のみならず、「真夏の文庫大特集」と銘打って、「森まゆみさんが選んだ文庫23点」「読者へのメッセージ」といった企画で様々な文庫を紹介。
特に後者は、稲葉稔、鈴木英治、千野隆司、葉室麟といった時代作家の方々による自作紹介が掲載されており、時代小説ファンも必見であります。
ちなみに、書店ではちょっと見つけにくい『週刊読書人』ですが、電子版も発売されているほか、コンビニの多機能コピー機で購入可能となっています(時代は進んでいる! と大いに感心)。
ちなみにこの7月28日号、前半と後半に分かれて販売されているのにご注意下さい。
私も最初気付かずに前半だけ買ってしまい、「載ってない!」と驚いたりしましたので……(後半に載ってました)
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