『バジリスク 桜花忍法帖』 第1話「桜花咲きにけり」
あの甲賀対伊賀の忍法合戦から十数年、高野山慈尊院村で修行する甲賀と伊賀の少年少女たち。その中に、実の兄妹でありながら、契りを結ぶことを宿命付けられた甲賀八郎と伊賀響がいた。一方、母危篤の報に江戸に急ぐ駿河大納言忠長に迫る刺客。そこに甲賀五宝連が駆けつけた!
既に放送開始から1ヶ月経った時点で恐縮ですが、やはり観ないわけにはいかない、というわけでアニメ『バジリスク 桜花忍法帖』の第1話であります。
『甲賀忍法帖』の漫画版である『バジリスク 甲賀忍法帖』を原案とした実質続編小説のアニメ版という、ややこしい成り立ちの本作。既に先行して漫画版が連載されていますが、そちらがかなり原作をアレンジした内容なのに対して、こちらは第1話の時点では、基本的に原作小説に忠実な内容の印象です。
高野山で暮らす八郎と響、そして6人の少年少女――ですが、6人が繰り広げるのは、年相応とは到底言い難い忍法合戦。
無数の虫を操る蜩七弦、男を恍惚とさせる涙、「犀防具」なる鎧をまとう甲羅式部、連発銃を操る蓮、目ン玉特捜隊……いや両目を飛ばす碁石才蔵、布を用いた幻術使い・現――いずれも「らしい」忍法の使い手、相手の命は奪わないまでも、倒した相手の首筋を薄く切りつけて証とするという、ほとんど真剣勝負であります。
そのプチトーナメントの勝者は現。どうやら常勝らしく、子供相手はつまらないと居合わせた甲賀五宝連が一人・草薙一馬にちょっかいを出す現ですが、あっさりといなされた上に、強靭な琴の弦を操る彼の忍法・天竪琴で桜の花の下に括られることに……
子供たちも戦いの中で煽り合っていたように、今なお(不透明決着だったこともあって)続く甲賀と伊賀の確執。それを引きずってか大人気なく現を苦しめる一馬ですが――そこに桜の枝を斬りながら現を解き放ったのは八郎。弦之介を思わせる外見の彼は、弦之介同様、甲賀伊賀の戦いを快く思っていない様子であります。
そしてそんな連中とは関係なく、一人楽しげに川遊びをしていたのは伊賀の棟梁たる響。やってきた八郎に天真爛漫に駆け寄る姿は、子供の頃の朧もこうであったか、と思わされます。ちなみに彼女によれば、八郎が切った桜は天膳桜と呼ばれている、なるほど何百年も生きていそうな大木。近くに天膳の亡骸も埋まっているとのことですが、桜と一体化してそうで怖いな……
閑話休題、そんな子供たちの姿を苦笑交じりに見つめているのは、妖艶な伊賀の美女・滑婆。八郎と響の世話役とも言うべき役目の彼女は、同じ立場の甲賀の青年・根来転寝と、八郎と響の「役割」を語り合います。
実の兄妹である八郎と響――しかし周囲は、それぞれ甲賀と伊賀随一の力を生まれながらに持つ二人を契らせ、その血を残そうとしていたのでした。それに何ら疑問を持たない滑婆と、懐疑的な転寝――体が弱いらしく、発明担当といった彼は、どこか忍者離れした人物といった印象であります(そんな彼のキャラに、三木眞一郎の声が素晴らしくハマる)。
と、そんなある意味平穏な日常の中、五宝連の下に届く急報。江戸の前将軍・秀忠の御台所が危篤であり、駿河大納言忠長がそれを知って城を飛び出して江戸に向かったというのではありませんか。現将軍たる兄・家光に疎まれる彼にとっては両親が頼みの綱、必死になるというのもわかりますが、僅かな供のみで、しかも豪雨の中、大井川を渡ろうとするのですからいかにも無謀であります。
果たして彼に襲いかかる怪しの忍び。襲いかかる刃を自在に躱す忍法浮舟を操る怪しの忍びに供回りを皆殺しにされ、窮地に陥った忠長の下に駆けつけたのは、八郎を除く五宝連――草薙一馬・緋文字火送・七斗鯨飲・遊佐天信。なるほど、「敗れた」とはいえかつては忠長(国千代)側を代表した甲賀と縁があるのだなあ、というのはさておき、さて五宝連の力やいかに、というところで続きます。
冒頭で基本的に原作に忠実と述べましたが、原作どおりの展開は実は後半――というか終盤の駿河大納言のくだりのみ。しかしアニメオリジナルである、甲賀八郎と伊賀響、さらに甲賀の少年忍者3名+1名と、伊賀の少女忍者3名+1名の紹介編とでも言うべき内容は、かなり手際よくまとめられていた印象があります。また、OP主題歌は前作同様陰陽座、ナレーションは朧の声を当てていた水樹奈々と、前作ファンへの目配りも嬉しいところであります。
が、肝心の絵や動きの質の方は、第1話にしてはちょっと――という印象。あまり効果的とは言えない謎の止め絵演出が随所にあったのには、ちょっとリアクションに困ります。
そして困ったと言えば、個人的には原作で全く好きになれなかった要素が、思い切り冒頭で触れられている点で――本当に個人的に、ではあるのですが、うーん。
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