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2018.02.08

『バジリスク 桜花忍法帖』 第2話「五宝連、推参す」

 駿河大納言忠長に襲いかかる黒鍬者を一蹴する甲賀五宝連。自分の護衛についた五宝連に、忠長はかつての甲賀伊賀の忍法合戦とその結末を問い、語る。同じ頃、高野山で根来転寝と滑婆も、同じことを語り合っていた。そして高野山を出るという八郎と出くわした響は……

 追っかけで恐縮ですが『桜花忍法帖』の第2話であります。今回は予想以上のスローペースで作中の時間はほとんど進まないのですが、それも道理、物語はあの忍法合戦の結末――すなわち『バジリスク 甲賀忍法帖』のラストを語り直すこととなるのですから。

 前回ラスト、刺客の黒鍬者の襲撃を受けた忠長の前に駆けつけた八郎以外の五宝連。草薙一馬の「天竪琴」、口から業火を吐く緋文字火送の「草生炎」、闇の中で燐光を放つ汗を分泌する七斗鯨飲の「蛍烏賊」、周囲に無数の撒き菱を放つ遊佐天信の「千手観音」と、かつての甲賀伊賀の代表選手もかくやという忍法で刺客を一掃した彼らは、忠長を守って江戸に向かうことになります。
 そして渡し船を用意する間に休むこととなった小屋の中で、忠長はあの忍法合戦のことを――弦之介の瞳術や不死身の天膳のことを語り、鯨飲に問いかけます。

 一方、何やら屈託を抱えた八郎は、村を離れることを決意。その八郎と出会った転寝も、それを制止することなく行かせるのですが――それを知って収まらないのは滑婆であります。そんな彼女に対して、転寝は、八郎と響は、弦之介と朧、いやその祖父母の弾正とお幻の悲恋体質を受け継いでしまったのでは、と憂い顔を見せるのでした。

 そして忠長は問います。無敵と言われた甲賀弦之介が伊賀の朧に敗れたのは何故かと。そして転寝は語ります。自害した朧を前に弦之介が伊賀の勝利を記し、自らも後を追ったと。忍びの中でこれらの真相を知るのは、立会役であった服部響八郎のみ……
 そして赤子の八郎と響を連れてきたのは、まさにこの響八郎(そして赤子を見て号泣する鯨飲)。八郎と響が死んだはずのあの二人の子だとしたら、響八郎はどのような役割を果たしたのか?

 そんな中、村を出るところであった八郎と、なんとなく迷子の捜索をした帰りの響が遭遇。八郎は、かつて二人が瞳と瞳を合わせた時に起きた現象を――その時は嵐のように周囲のものを吹き飛ばした現象を――恐れていると語ります。
 これに対して「八郎とならどうなってもいい」と答える響ですが……

 そして忍法合戦の結果について未練たらたらの忠長。あの時を境に彼の運命は天国と地獄が逆転したようなものだったわけで、複雑な想いを抱き続けているのも無理はありませんが――そこに小屋の扉を開けて、天信が現れたものの、どうにも様子がおかしい。
 忠長と鯨飲、火送が唖然と見つめるその前で、天信の首が地に落ちて――次回に続きます。


 というわけで、本当に本筋の方は進まなかった今回ですが、忠長と鯨飲、転寝と滑婆の二組の口から、前作の忍法合戦の結末が語られ、そして我々がよく知るあの結末を知るものが作中にはほとんどいないことが示される――それ以前にあの結末が真実なのかも含め、全ては「藪の中」であることを見せるという演出は実に面白いと思います。(しかし回想シーン、制作会社が変わったために前作の映像が使えない(らしい)のがもったいない……)
 何はともあれ、あれだけ悲劇的な、そして美しい最期を遂げた弦之介と朧が生きていて、子供まで作っていたとしたら、それはそれで涙を返せ案件ですが、それもまた「藪の中」なのでしょう。まあ、甲賀と伊賀であれば、色々な手で本人抜きでも子供くらい作りそうではありますが。

 そして見るからに強豪ムードを出していたにも関わらず、あっさりと倒された天信。いやOPとEDに出てなかったから、予想していた向きも多かったのではないかと思いますが……(この展開、原作初読の時はかなり衝撃的だったのです)

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