野田サトル『ゴールデンカムイ』第13巻 潜入、網走監獄! そして死闘の始まりへ
いよいよアニメ放送開始目前の『ゴールデンカムイ』、原作の方も一大クライマックスに突入であります。物語の始まりともいうべきのっぺら坊の元に向かう杉元・土方連合チームの前に立ち塞がるのは、網走監獄を預かる犬童典獄。果たして潜入作戦の行方はいかに……
何だかものすごい変態脱獄囚の刺青人皮を手に入れつつ、目的地である網走監獄に向かう一行。果たして本当にのっぺら坊はアシリパの父・ウイルクなのか――それを確かめようとする一行ですが、その前に屈斜路湖畔で新たな刺青囚人が立ち塞がることになります。
盲目の盗賊団を率いる自らも盲目のガンマン・都丹庵士。超感覚で闇から忍び寄るドント・ブリーズ男に対するはほとんどフルメンバーの杉元一派ですが――よりにもよって全員男だらけの温泉大会状態。
フルメンバーというよりフルフロンタルの状況でいかに強敵と戦うか――というサスペンスと、屈強な男のハダカ(あとキノコ)が乱舞するナニっぷりの共存は、いかにも本作らしい展開であります。
そしてその混沌の中で、インカラマッから裏切り者と指摘されたキロランケ、そのインカラマッと結ばれた谷垣、三人の関係をクローズアップしてみせるのも、また巧みとしか言いようがありません。
が、この冒頭の展開もほんのジャブ代わり、この巻のメインとなるのが網走監獄潜入作戦であることは間違いありません。
白石が脱獄王としての本領を発揮してのこの作戦に力を合わせる杉元チームと土方チーム。さらに内部からの意外な(?)協力者の参加もあり、いよいよ潜入開始であります。
杉元・アシリパ・白石・庵士というメンバーでの潜入(と、ここで完全にギャグのタイミングでプチ波乱を入れてくるセンスもすごい)は無事成功し、ついにのっぺら坊と対面するアシリパ。
しかし――ここからがこの網走監獄編の本当の始まりとも言うべき展開。のっぺら坊の意外な反応に始まり、幾人もの登場人物たちが秘め隠していた思惑を露わにして動き始めたことで、一気に状況はひっくり返ることになります。
さらにそこにタイミングを見計らっていた鶴見中尉の北鎮部隊が、犬童の策の裏をかいた意外な手段で突入を開始。
杉元・土方・鶴見・犬童――四つの勢力がぶつかり合う死闘に突入する、その巨大な混沌の直前でこの巻は幕となります。
というわけで、おそらくは物語も中盤(?)のクライマックスに突入した本作。いまだ刺青人皮は全ては集まっておらず、これまでに散りばめられた伏線もまだ残ったままですが、しかし全ての勢力が結集してのこの網走監獄での戦いが、今後の物語の流れを大きく変えていくことは間違いありません。
そしてその網走監獄突入前に、インカラマッや谷垣、さらには尾形がフラグめいたものを立てているのも気になるところ(いや、写真館のエピソードも入れれば全員候補かもしれませんが)。
特に以前からフラグを立て続けている上に相変わらず怪しげな動きを見せるインカラマッの運命は本当に変わるのか、谷垣のボタンパワーに期待したいところであります。
そしてもう一つ、前巻でいささか唐突に登場した感のある石川啄木は、この巻でも出番は少ないものの、ある意味期待通りのダメ人間っぷりを発揮。
しかしその言葉の中には土方の今後の策のヒントが含まれているようで、こちらも大いに気になってしまうのです。
(個人的には、啄木が釧路新聞社の記者として登場したことで、今が1908年と判明したことが大きいのですが……)
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