宇野比呂士『天空の覇者Z』第5巻 激突! 新生Zvs第三の超兵器
ギヌメールの犠牲により、要塞島から脱出した天馬たち。彼らのもたらしたT鉱により、ネオ・カイザーツェッペリン号がついに起動する。しかしそこに襲いかかるベイルマン局長率いる第三の超兵器「聖なる道(ヴィア・サクラ)」。戦闘を優位に進めるZだが、ベイルマンは諸共に自爆を狙っていた……
イタリア要塞島でのT鉱奪取作戦(実は陽動作戦)を成功裏に終え、飛行機で無事に要塞島を脱出した天馬・アンジェリーナ・J・ギヌメール隊長――と思いきや、そこに追いすがる数十機の敵機。そこで隊長は「ここは俺に任せて先に行け」をやり、姿を消すことに……
悲しみを堪えてZのドックに向かう途中、ドイツ艦に遭遇したかと思えば、それはT鉱を奪取したネモの乗艦。ギヌメールの犠牲を一顧だにしないネモに怒りを燃やしながらも、天馬たちはネモと共にT鉱を積んで先に急ぐことになります。
一方、Zのドックでは、ウェルの総指揮により生まれ変わったいわばZ(これまでのZは飛行試験も済ませていなかったプロトタイプ)がT鉱の到着を待っていたのですが――そこに突如襲いかかったのは、ベイルマン局長が指揮する要塞島に隠されていた第三の超兵器――「聖なる道」(ヴィア・サクラ)!
カエサル(つまり第一帝国皇帝)が凱旋した街道を名に冠するこの艦こそは、ルフトバッフェ空中艦隊構想において高速戦闘巡洋艦の役割を果たす双胴の巨艦――居住性や艦載機等の代わりに、装甲と火力、機動性に全振りした戦闘艦であります。
折角改修されたZも、発進前の猛攻には風前の灯火ですが、そこに駆けつけた天馬の機体は、凄まじい弾幕をくぐり抜け、ついにT鉱を届けることに成功します。しかし上空で待ち構える「聖なる道」はT鉱弾――ロケット弾の先にT鉱を取り付けたいわば小型のZ砲を発射。ドックもろともZは消滅――と思いきや、完全気密により水中から脱出したZは、天馬の操縦によりその姿を現すのでした(ちなみに天馬、前巻受けた重傷のため手術を受けた直後だというのにこの不死身っぷり)。
しかしベイルマンもさるもの、雲の中に隠れて浮遊機雷でZの動きを封じ込め、さらにT鉱弾を発射! しかしネモの機転によりエーテルガスを放出したZはT鉱弾を逸らすと同時に機雷を跳ね飛ばし、一転攻勢で「聖なる道」に火力を集中。さしもの巨艦も大打撃を受けるのですが……
しかしヒトラーへの愛、というより強烈な執着からZ打倒、そしてアンジェリーナ抹殺に燃えるベイルマンは最後の手段としてZと強制的に武装強化合体を実行、Zに対して白兵戦を挑むのですが――しかしこれが真の目的ではないと気付いた男がいました。それはギヌメール――撃墜されて捕らえられた彼は、ベイルマンの下に連行され、その戦いぶりを目の当たりにする中で、彼女がZもろとも自爆するつもりであることを見抜いたのです。
しかしそこで容赦なくギヌメールを貫くベイルマンの弾丸。しかしその重傷の身を押して彼は銃座に向かい、射撃でもってモールス信号を送り、力尽きるのでした。
そのメッセージを受け取ったネモの命で「聖なる道」にウェルとともに向かう天馬ですが、向かった先の敵のエンジンルームでは既に操作を終えたベイルマンが操作盤を爆破し、エンジンを止めることは不可能に。それならばエンジンを切り離して放棄を、と思えば、既に臨界近くなったT鉱の反重力現象により投下は失敗に終わってしまいます。
そんな中、ギヌメールの無惨な姿を発見した天馬は、怒りに燃えて流星の剣をベイルマンに向けるのですが――しかしギヌメールの言葉が天馬を止めます(不死身か!)
一方、敵の白兵戦力に突入されたZは苦戦中。特にその中の一人――到底常人と思えぬ怪力と耐久力を持つ巨漢の前に、次々と兵士は倒されていきます。ついに出陣したJのブーメラン剣でも倒せぬ強敵ですが、しかし突然何かを察知したかのように「聖なる道」に戻っていきます。
その頃、その「聖なる道」では、ギヌメールの言葉に自分が為すべきことを思い出した天馬が、Zと敵艦を繋ぐアームを両断せんと構えるのですが――そこに割って入ったのはあの巨漢。天馬の刃が割ったヘルメットの下から現れたのは、かつてZ奪取の際に死んだはずの――というところで次巻に続きます。
予想もしなかった第三の超兵器の存在に驚かされ、その相手をものともせぬネオZのパワーに驚き、そしてさらにそれをひっくり返す敵の攻撃に手に汗握り――と逆転また逆転の展開が非常に盛り上がるこの巻。それを飾る、脂の乗りきった作者の筆も素晴らしく、特にこの巻の天馬の気迫に満ちた表情・姿は絶品であります。
あと、ギヌメール隊長の不死身っぷりには、リアルタイムで読んでいた時に本当に驚きましたね――立ち位置的にヤバいかと思っていたら、もう。
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