『つくもがみ貸します』 第十幕「檳榔子染」
実は20両もの借金があった出雲屋。清次が一ヶ月後に迫った返済期限に頭を悩ます中、うさぎの櫛をどんな高値でもいいから売って欲しいという侍が現れた。借金の存在を知ったつくもがみたちは、うさぎが売られてしまうのではないかと色めき立つが、そこにおかしな霊媒師が現れて……
いきなり怖そうなおっさん相手に頭を下げている清次。どうやら清次は父の知り合いだというこの越中島の網元に借金をしているようですが――その額なんと20両というからかなりのものであります。店の品物を売ってはどうかという網元の言葉に首を縦に振らず、頼みに頼んで来月まで待ってもらうことになった清次ですが、網元ももう次はないと最後通牒の状態です。
清次がそんなことになっているとは知らず、店にうさぎの櫛を返しに来た早苗と楽しく語らっていたお紅。ところがその櫛を目にした一人の侍が、お紅と清次に思わぬ提案をしてくるのでした。
その侍――高田藩の勤番武士である上川は、故郷に残してきた娘が買い与えた櫛をなくして悲しんでいると知り、土産にうさぎの櫛を買いたいと言ってきたのであります。しかし金に糸目はつけないと言われても、店の品物を、特につくもがみの品を売れるはずもない二人。特にうさぎの櫛は、先ほど早苗が三両で買うと言っても断ったほどなのですが――よほど欲しかったのか、上川は自分の脇差しと交換しても良いと言い出します。
上川は8両と言っていた脇差しですが、清次の目利きでは15両もの値がつくという品。清次にしてみれば渡りに船の話ですが――お紅に借金のことを切り出すことができません。
そんな清次の様子を訝しんだお紅は、うさぎの櫛(と、いつものことながら、つくもがみ代表として後をつけることとなった野鉄)を身に着けて外出。お紅は、独り言の態で、先日つくもがみたちが話していた佐太郎との過去の出来事の続きを語りだします。
蘇芳の香炉が亡くなる直前、大火で店を失い、父親も喪ったお紅。そんな彼女を助けるため、佐太郎が蘇芳の香炉を売ってその代金を与えたのではないか――という疑いのことは以前も語られましたが、そのことを、佐太郎自身がお紅に語っていたのであります。お紅への想いもあってどうしてもお加乃との縁談を受け容れられないが、しかし蘇芳の香炉を紛失したために断るわけにはいかない――板挟みとなった彼は、江戸を出ると彼女に告げたのでした。
お紅は、清次がわらしべ長者作戦で手に入れた80両のかんざしを売り、蘇芳と同じ作者の香炉を買って佐太郎に渡そうと考えるのですが――いやいや、いくらその前に清次がお紅の望むことに使っていいと言ったからといって、さすがにそれはどうなのかと思いますが、それでもOKを出す清次はマジいい人と言うほかありません。
そんな清次が自分に隠し事をするなんて――と、冷静に考えれば酷いことを言うお紅。そんな彼女のために清次の隠し事を調べたいといううさぎの願いに応え、つくもがみたちは調べに当たります。そしてついにあの借金のことがバレてしまったのですが――最初1両だったのが20両になっていたとは、網元もとんだ鬼畜野郎であります。
何はともあれ、清次が借金返済のためにうさぎを売るつもりだと思った野鉄はエキサイト、しかしうさぎはつくもがみである前に櫛でありたいと、悲壮な決意を固めるのでした。
そしてその翌日、出雲屋を訪れる上川。しかしその傍らには、数日前から店を窺っていた霊媒師を自称する男がついていました。この男、上川やお紅から怪しい気配を感じて店に訪れたというのですから、それなりの能力を持つのでしょうが――激怒したうさぎたちの攻撃を受けてあっさりKOされるのでした。
事ここに至り、上川につくもがみのことを打ち明ける清次。つくもがみはとても大切な隣人だ、だから櫛は売れないと語る清次に、上川は家族と離れるのは辛いことだろうと快く納得、秘密を守ると語るのでした。
しかし借金は相変わらず――さてどうするのか、というところで以下次回であります。
過去話を除いてはオリジナルエピソードだった今回、本作ではこれが定番のスタイルとなった感がありますが、あと今回を除いて残り2話で完結するのか、少々心配になってきました(次回もオリジナルのようですし)。
それはさておき、今回は清次の本心を探るという展開――借金のことは途中まで伏せておいた方が効果的だったような気もしますが、清次の態度に悩むお紅が、うさぎ(と野鉄)に問わず語りに話す場面は、人間とつくもがみが馴れ合わない本作だからこその味わいがあった、なかなかの名場面だったと思います。
しかし冷静に見れば、清次に対してお紅は酷いことばかり言ったりしたりしている印象は否めないのですが――さて。
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