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2018.10.03

『Thunderbolt Fantasy 東離劍遊紀2』 第1話「仙鎮城」

 魔剣目録の隠し場所を求め、護印師の砦・仙鎮城を訪れた殤不患。城主・伯陽侯に目録を預けて城を離れた殤不患だが、その前に西幽での旧友・浪巫謠が現れ、仇敵の配下・蠍瓔珞が東離に潜入したと警告する。急ぎ引き返した殤不患だが、既に城内には無数の恐るべき蠍が待ち受けていた……

 世を騒がした恐るべき魔剣妖剣邪剣の数々を集め、封印した魔剣目録。封印されたその数実に36本――から1本減って今は35本ですが、その剣の数々を封印し、それが悪人の手に渡らぬように手に遠く西幽の地から東離までやって来た剣侠こそが本作の主人公の一人・殤不患であります。
 この魔剣目録を封じる場所を求めていま彼が訪れたのは、護印師の一人・伯陽侯が治める仙鎮城。難攻不落と謳われるだけに、門番に早速誰何される殤不患ですが、同じ護印師にして前作で殤不患に助けられた丹翡の紹介状でそこはクリアであります。

 見るからに厳めしい伯陽侯も、さすがに魔剣目録の存在には半信半疑であるものの、しかしここでも丹翡の紹介状がものを言って、殤不患の頼みを聞き入れるのですが――どうも事態を甘く見ている感があるのが気になります。そもそもこういう話で難攻不落を謳うのはフラグであって――というのはさておき、殤不患までもあっさり魔剣目録を預けて去ったのはいかにも油断であります。

 何はともあれ重荷を手放して城を出た殤不患ですが、その前に現れたのは紅蓮の装束をまとった謎の美青年。その手には奇怪な顔のついた琵琶が――と、その姿を目にした殤不患は驚きの表情を見せます。
 そう、この美青年こそは西幽で殤不患の相棒であった吟遊詩人・浪巫謠。極端に口数が少ない(プロの声優さんではないから)のを、手にした喋る琵琶・聆牙が補うという、なかなか愉快な人物であります。

 しかし久闊を叙する間もなく浪巫謠が告げたのは恐るべき知らせ――西幽で殤不患の仇敵であった禍世螟蝗の配下・蠍瓔珞が、彼らより一足早く東離に入ったというではありませんか。蠍瓔珞といえば、毒と忍びの名手と解説してくれながら、一人城に馳せ戻る殤不患ですが――もちろん時既に遅し。
 門番たちが気がつく間もなく、蠍瓔珞の操る恐るべき蠍――一刺しで犠牲者を硬直させ、その命を奪う――の前に城の守備はたやすく破られ、伯陽侯も無数の蠍に囲まれ、その命は風前の灯火であります。

 一歩遅く一刺しを受けた伯陽侯に荒っぽい応急処置をした殤不患ですが、そこに現れたのは真の敵たる蠍瓔珞。無数の蠍を奪って巻物を奪った彼女の術を見破り、相手が美女であろうがかまわず一撃を食らわせる殤不患ですが、力では劣っても、技や奸智では上回るのはこの手のキャラの定番であります。
 隙をついて窓から外に飛び出した蠍瓔珞を追う殤不患の眼前で、目録を開いてみせた蠍瓔珞。明言はされていないと思いますが、おそらくは厳重に術が施され、殤不患以外は魔剣を解放できないと思われた目録の封印をあっさりと破られた殤不患は、さすがに驚きを隠せません。

 が、勝ち誇る蠍瓔珞に後ろから絶技を放つのは駆けつけた浪巫謠。琵琶をかき鳴らすことで衝撃波を叩きつけるという荒技に追いつめられた蠍瓔珞に一撃を放つ殤不患ですが――それが目録を二つに裂いた! やっぱり巻物争奪戦は巻物が破けないと! と喜ぶ一部の視聴者は放っておくとして、敢えて短い方の巻物を取った蠍瓔珞は、その場から消え失せるのでした。

 と、場所は変わって東離の衙門(役所)。ここで東離の役人を前に熱弁を振るうのは、西幽から精鋭を率いてやってきたという眼鏡の青年・嘯狂狷であります。西幽の捕吏である彼は、いかなる理由によってか、殤不患を鬼畜外道の大悪人、残虐非情にして怜悧狡猾な希代の奸賊と呼び、彼を捕らえるために協力を要請するのですが――そこに平然と現れたのは本当の大悪人にして希代の奸賊、本作のもう一人の主人公・凜雪鴉!
 大盗賊が衙門で何をやっているの、と言いたくなるところですが、ちゃっかりと中央より視察にやってきた役人・鬼鳥を名乗る彼は、何食わぬ顔で嘯狂狷との話に加わって――ああ、かわいそうな眼鏡君、と前作からの視聴者が皆思ったところで次回に続きます。


 というわけで始まった、武侠ファンタジー人形劇約2年ぶりの待望の続編。前作では巻き込まれた風来坊という態だった殤不患ですが、本作では彼が台風の目となる様子で、第1話に登場する新キャラが全て彼絡みというのが、今後の展開を期待させてくれます。
 もっとも、前作終盤で呆れるほどの強さ・格好良さを見せてくれた彼にしては、今回はいささか迂闊な場面が多かったような気もしますが――それもまたらしいといえばらしい。ラストに顔を見せただけでその場をさらっていった凜雪鴉ともども、本作での痛快な暴れっぷりに期待するばかりであります。


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