『Thunderbolt Fantasy 東離劍遊紀2』 第9話「強者の道」
辛うじて浪巫謠から逃れたものの、戦意を失った蠍瓔珞に自らの生命を捧げるように命ずる七殺天凌。ついに魔剣を手放した蠍瓔珞は自ら殤不患の前に現れ、最後の戦いを挑む。決着がついても命を奪わない殤不患に強者の道を問うた蠍瓔珞は、その答えに救われた思いで新たな一歩を踏み出そうとするが……
前回面白悪党コンビの乱入で浪巫謠から逃れた蠍瓔珞は、いつもの納屋で落ち込みモード。しかしそんな彼女を容赦なく七殺天凌は追い込み、手に入れ損ねた人間の命の代わりにお前の血を与えろと無茶苦茶なことを言い出します。一度は逆らえず手首に刀身を押し当てる蠍瓔珞ですが、あまりの仕打ちに耐えかね、七殺天凌を放りだすと、封印の呪符を放つのですが――しかし幾つもの呪符を貼られても堪えることない魔剣に、蠍瓔珞はその場から逃げ出すことしかできないのでした。
一方面白悪党コンビの方はといえば、いい気になった嘯狂狷は、凜雪鴉に盗品置場に案内するよう強制、その結果によっては捕吏に突き出さないでやらんこともないと上から目線であります。そこで凜雪鴉が案内したのは、前作で追い込みをかけた刀剣コレクターの悪の首領から奪った刀剣置場であります。
物が物だけに簡単に売り払うこともできないとぼやく凜雪鴉に、嘯狂狷は絶対足のつかない盗品の売り先があると――そう、西幽に持っていって売ればよいと得意顔。もちろん自分がこれまで奪ったブツも西幽から東離に持ち込んで――と、今まで捕らえた相手を殺して盗品を横領していたことを隠しもしない嘯狂狷に、明らかに適当に調子を合わせている凜雪鴉であります。
さて、視聴者からはポンコツ扱いされ、七殺天凌の魔力の前に薬中→廃人コースを歩む蠍瓔珞。その前に思いとどまり、自分の命運は自ら決めると思い定めた彼女は、その辺を歩いていた殤不患の前に姿を現し、最後の対決を望むのでした。そいてお互い小細工なしの正面からの一刀を放つ二人ですが――しかし殤不患の刀は蠍瓔の刀を珞を粉砕、そのまま彼は刀を蠍瓔珞の細首に――刺さない。
くっ殺せ! と言う蠍瓔珞に対して刀を収め、殤不患は語ります。弱いから負けて死ぬ。強いから勝って生き残る――世の中そんな単純じゃない、と。勝った奴が生きるのは当たり前だとすれば、負けてなお生き延びた奴はさらに強いのではないか? ……まるでこちらの方が坊さんのようですが、負けても強いという生き方があるということは、ただ強さだけを求め思い詰めていた蠍瓔珞にとって、まさに蒙を啓くものだったと言えるでしょう。
ならばお前の目指す強さとは、最強の在り方とは? と問いかける蠍瓔珞ですが――これに対して、負けて生き延びた奴の仕返しに怯えない奴が一番強い、と答えて完爾と笑う殤不患。いやはや、親指を立てて賞賛したくなるほどの好漢っぷりであります。
そして殤不患は七殺天凌を求めて先を急ぎ、蠍瓔珞は、己が勝手に背負っていた重荷を下ろして、足取りも軽く歩み出すのですが――その瞳に、一人佇む諦空の後ろ姿が映ります。自分を見つめ直すきっかけをくれた礼を言い、まだ意味を探して旅をするのであれば、迷惑でなければ一緒に――という彼女に、旅は終わった、答えは得たと振り返る諦空。その手には――七殺天凌が!
人生は戦うに値する、命は奪うに値する! とよくわからないことを言いながら、凄まじい気を放つ諦空。その気の激しさたるや、毛が逆立つどころか、螺髪がストレートのロン毛に変じるほど(斬新な演出だなあ)。そして彼はあまりの衝撃に立ち尽くす蠍瓔珞に、無慈悲な一刀を放つのでした。
ついに相応しい遣い手を得たという七殺天凌に、諦空は還俗を宣言、かつて名乗った婁震戒の名とともに、新たな一歩を踏み出します。遅れてその場に現れた浪巫謠は、蠍瓔珞の亡骸の近くに散らばる数珠を見て……
終盤間近となって、やはりこうなったか、という今回。本作は全般的にスケール――特に悪役のスケール不足の印象が強くありましたが、今回ようやくラスボスに相応しい存在が登場したという印象があります。
が、それでもいきなり登場感は否めないわけで、果たしてこの先、婁震戒のキャラクターがどれだけ掘り下げられるのかが、大いに気になります。まさか他の作品で描かれたからOKとはしないと思いますが……
そのスケール不足の悪役のうち、悲しくも今回退場となったのは蠍瓔珞。『生死一剣』の殺無生のような無闇な希望の持ちっぷりからこれは危ないと思いましたが――最期に己の誇りを取り戻せたことを以て瞑すべきでしょう。
もう一人の悪役の方は、どう考えても簡単には死ねるはずもないのですが――しかしあまりに小物過ぎて、もはや凜雪鴉の獲物に相応しいかも怪しい状態。そもそもこの先話の本筋に絡めるのか、別の意味で心配であります。
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