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2018.11.24

『Thunderbolt Fantasy 東離劍遊紀2』 第8話「弦歌斷邪」

 蠍瓔珞が手にした七殺天凌を前に窮地に陥る殤不患。七殺天凌の気紛れで命拾いしたものの、そこに現れた凜雪鴉を見逃した殤不患に怒った浪巫謠は、彼と袂を分かつのだった。一方、鬼鳥=掠風竊塵と見抜いた嘯狂狷は、凜雪鴉に七殺天凌と殤不患を噛み合わせるという策を手伝わせようとするが……

 七殺天凌を手にした蠍瓔珞には殤不患が、桃色光線に魅了されてやたらとアクション作画が良くなった嘯狂狷には浪巫謠が挑む場面から始まった今回。しかし嘯狂狷はともかく、まともに相手を見られない状態で七殺天凌と戦うのはさしもの殤不患にも荷が重く、足に傷を受けてしまうことになります。それだけでもエナジードレイン状態になるのですから始末が悪い剣ですが、しかしここで止めを刺すよりもこやつの大事な者たちを先に殺して悲しませてやろう、的なことを七殺天凌が言い出したことで命拾いした殤不患。しかしこれはどう考えても敗北フラグですが……
 と、この場をひとまず去ろうとする蠍瓔珞を後ろから追いかけ、一撃を食らわす嘯狂狷。どんだけポンコツなのか蠍瓔珞、と思いきや、それは嘯狂狷を止めるための凜雪鴉の幻術だったのですが――ここで彼曰く「オモチャ」である嘯狂狷を連れて行こうとする凜雪鴉を殤不患が放置したのに怒った浪巫謠は、彼とは別行動を取ると告げるのでした。

 一方、刑部に運び込まれた嘯狂狷は、実は途中で意識が戻ってましたよ、この眼鏡は真実を見抜くんです的なことを言いながら、鬼鳥=掠風竊塵という秘密をばらされたくなかったら――わかるよね? 的にヘタレ眼鏡から鬼畜眼鏡に変貌、一転攻勢で凜雪鴉を脅しにかかります。その言葉におとなしく従う凜雪鴉ですが――しかしどう考えても素直に恐れ入っているはずもありません。別に正体がばれた程度で彼が困るとも思えず、むしろ利用する気満々にしか見えないのですが……
 何はともあれ、凜雪鴉を屈服させたと思いこんでご満悦の嘯狂狷は、蠍瓔珞は放っておき、殤不患と噛み合わせて互いに消耗させて漁夫の利を得ようと企てるのでした。

 さて、浪巫謠と分かれて蠍瓔珞を追う殤不患が見つけたのは、何やら地面を掘っている諦空。彼は運悪く七殺天凌に行き合って殺された犠牲者を弔おうとしていたのですが――何とこれは、以前毒にやられたのを諦空に救われた老夫婦ではありませんか。お前が救った蠍瓔珞が、以前お前が救った老人たちを殺したと詰る殤不患ですが、それではこの殺されるために老人たちを助けたかと、平然とこの世の無常――というか無意味さを語る諦空に、殤不患も怒りと呆れ半分。しかしさすがに浪巫謠のように斬りかかることもなく、その場を去るのでした。

 そして当の蠍瓔珞は――いつの間にか西幽に戻り、速水奨の声で喋る石板の前に立っているではありませんか。そして任務を果たさなかったことを咎める速水奨に対して公然と反旗を翻した彼女は、七殺天凌でその場にいる者たちを皆殺し(皆壊し)に――というところでハッと目覚めた蠍瓔珞。七殺天凌に煽られて非常に気まずい気分の蠍瓔珞ですが、絶対の忠誠を誓った主に対する反逆心が自分の中にあったことに衝撃を隠せない彼女には、まだまだ武人の心が残っているようにも見えますが……(にしてもまだあの納屋に起居する蠍瓔珞は、気に入ってるのかしら)。

 そんな彼女の葛藤を知ってか知らずか、さあ食事だと促し、街に出て人々を毒牙にかけていく七殺天凌。再び白黒画面の惨劇が始まったその時――駆けつけたのは浪巫謠であります。桃色光線を避けるべく瞳を閉じた彼をあざ笑う七殺天凌ですが――しかし彼はその状態から全ての攻撃を躱し、そして的確に攻撃を仕掛けてくるではありませんか!
 彼は楽士――優れた音感と聴覚の持ち主。そう、彼にとっては音を聴くことで、視るのと同じく周囲の状況を的確に把握できるのであります。ここで久々に登場した(キャラ数が少ないので)念白が最高に格好良いのですが、音のみで周囲を捉えるのを、色を反転させたようやビジュアルで描くのもまた格好良い。これはもう主人公交代してもいいのでは、というほどなのですが……

 そこに割って入ってきたのは、「喪」顔のゾンビたち。奪った喪月之夜を悪用する嘯狂狷と、目を閉じても効果のない幻惑香を操る凜雪鴉――漁夫の利を狙う二人の妨害を受け、七殺天凌と蠍瓔珞を取り逃がした浪巫謠は、「右も左も曲者ばかり」という聆牙の言葉に、「ここは魔境だ!」と吐き捨てるのでした。いやごもっとも。


 相変わらず話は進んでいるようで進んでいない今回ですが、サブタイトルで示唆されているように、浪巫謠の活躍が見れたのは嬉しいところ。いつか必ず殤不患とは袂を分かつと思っていたのですが、その理由が優しすぎる殤不患を慮ってというのがまたらしいところで、どうしようもない利害関係で結ばれた凜雪鴉ー嘯狂狷と七殺天凌ー蠍瓔珞の二組との違いが際だっているのも良いと思います。


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