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2018.11.01

『Thunderbolt Fantasy 東離劍遊紀2』 第5話「業火の谷」

 業火の谷を訪れた凜雪鴉と浪巫謠の前に現れた龍・歿王。その火炎に苦戦する二人だが、凜雪鴉の口車と浪巫謠の絶技により、無事龍の角を得る。しかし解毒薬の製法を聞いた浪巫謠は意外な行動に出るのだった。一方、隠れ場所を知られた殤不患は、嘯狂狷率いる捕吏の包囲に窮地に陥るが……

 蠍瓔珞の毒に苦しむ殤不患を救うため、はるばる鬼歿之地にやってきた凜雪鴉と浪巫謠。目指す龍がいるという業火の谷に到着した二人の前に龍が現れますが――微妙にサイズが小さい。あっさり凜雪鴉に撃退される龍ですが、その時、巨大な影が現れ、龍を文字通り叩き潰してしまうのでした。
 その影こそは、オープニングに登場していた謎の怪獣――確かに片翼状態の龍であります。何と人語を喋るこの龍、自らを歿王を名乗り、この小龍を食うからお前らは失せろと親切にも二人に語りかけますが――もちろん二人が引くはずもありません。それどころかいけしゃあしゃあとその角が欲しいと言い出した凜雪鴉にもちろん歿王はエキサイト。グワーとひらいた口から炎、あたり一面焼け野原であります。

 もちろん周囲に散在する石柱に隠れてこの攻撃を躱す二人ですが、炎をはき続ける歿王に接近するのはほとんど不可能。さらに凜雪鴉が、お前の片翼を斬った男のために力を貸して欲しいなどとまたもや歿王のヒートを煽るのですが――凜雪鴉は浪巫謠に対し、龍の火炎は気息(ブレス)、すなわち声だから、お前の魔性の声で太刀打ちできるのではないかと無茶振りをするのでした。
 これに応えた浪巫謠は、歿王を前にオープニングのサビを熱唱! 浪巫謠の歌エネルギーは何と歿王の炎を圧倒、炎を出せなくなったところに挑発をかましてきた凜雪鴉を襲おうとして歿王は石柱に激突、そのまま下敷きに。そしてその隙に剣モードの聆牙を手に背中を駆け上がった浪巫謠は、見事に角を切り取るのでした。石柱に押し潰されてジタバタしながらも、二人に対して呪いの言葉を吐く歿王ですが、再登場はあるのかなあ……

 何はともあれ龍の角を手に入れ、凜雪鴉から解毒薬の製法も聞いた浪巫謠。これであとは殤不患のもとに戻るだけ――と思いきや、突如凜雪鴉に音撃を食らわせる浪巫謠。お前は殤不患のためにはならん、お前は悪だ、生かしておいては世に災いをなすのためにならない奴と見た、だからコロス! ――と、実は最初から凜雪鴉を斬るつもりだった浪巫謠の理屈は、好漢的に正しいのか間違っているのか悩ましいところではあります。が、こういう行動に出るところを見ると、浪巫謠は殤不患よりは頭が固い、というか生真面目なのかもしれません。
 もちろん凜雪鴉がここで倒されるはずもなく、魑翼でその場を去るのですが――この展開を彼が予想できなかったとは思えないわけで、それでは今回の行動はなんのためのものであったか、気になるところではあります。

 さて、そんな状況とは知る由もない殤不患は、不眠不休で調息を続けることで毒を抑えてきましたが、常人を遙かに越える内功を持つ彼でもこれは無茶というもの。ほとんど限界寸前の状況ですが――悪いことに、そこに蠍瓔珞と嘯狂狷、さらに彼の部下たちが近付いてきます。自分の作った毒であれば匂いで察知できる――と、蠍の一匹を探知機代わりに使う蠍瓔珞の前には、浪巫謠のカムフラージュ策も通じず、急いで洞窟から逃れる殤不患ですが、しかし弱った身体で遠くまでいけるはずもありません。
 捕吏たちに見つかり、たちまち追いつめられる殤不患。いくつもの傷を負いつつも、その場から何とか逃れようとする彼の姿は、大侠らしからぬものがあるかもしれませんが――しかし自分のために仲間たちが命を賭けている時に、自分が倒されるわけにはいかないという彼の意地は、やはり好漢のそれと言うほかありません。
(そんな殤不患の――江湖の好漢の行動原理をあざ笑う嘯狂狷は、やはり江湖に対する官の側の人間なのだと感じます)

 しかしそんな殤不患の心意気を理解できぬ蠍瓔珞と嘯狂狷は、それぞれ調子に乗った悪役そのものの、余裕こいて油断しきった台詞を吐くのですが――そこに空から駆けつけたのは浪巫謠! しっかり解毒薬を完成させていた浪巫謠から薬を受け取った殤不患が思い切って飲み込むと――何かスゴい光とか飛び出して、一瞬のうちに毒はおろかダメージも回復した様子。さあ、今度は殤不患のターンだ! というところで次回に続きます。


 OP映像を見た時はてっきりラスボスかと思ったら、単なる素材の元だった龍との対決が描かれた今回。その対決の模様や、その後の思わぬ仲間割れなどそれなりに楽しめたのですが、やはり物語は前に進んでいない印象であります。
 そろそろ物語は折り返し地点にさしかかりますが、物語の向かう先がまだ見えないのは、正直に言って不安なところです。


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