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2018.12.15

『Thunderbolt Fantasy 東離劍遊紀2』 第11話「悪の矜恃」

 決戦に備え、魔剣目録を捲殘雲に預ける殤不患。その頃、悪事が露呈して追いつめられた嘯狂狷をさらに追い込もうとする凜雪鴉だが、思わぬ開き直りを見せた嘯狂狷に当てを外されてしまう。一方、仙鎮城を壊滅させた婁震戒の前に立ち塞がった浪巫謠は、視界を断って七殺天凌を追い詰めるのだが……

 冒頭、森の中で立ち合う二人の男。一人は殤不患、もう一人は短髪に眼帯の――捲殘雲! 槍を捨て、今は妻となった丹翡の家に伝わる丹輝劍訣を操る捲殘雲は、まだ慣れぬ技ということもあって殤不患にはまだまだ及びませんが、丹翡の気持ちもしっかりと慮るなど、殤不患をして親指を立たせしむるほどの好漢に成長した様子です。
 さて、その捲殘雲に殤不患が会いに来たのは、決戦を前に万が一にも敵に渡せない魔剣目録を彼に預かってもらうため。もちろん快諾した捲殘雲は、かつての兄貴分・狩雲霄と行動していた頃の隠れ家を転々として、一週間稼いでみせると請け合うのでした(人間何が役に立つかわからないものです)。

 一方、前回ついに凜雪鴉のトラップに引っかかり、東離では宝剣泥棒の濡れ衣を着せられ、西幽ではこれまで秘宝の数々を横領していたことが露見(予定)となってしまった嘯狂狷。(たぶん凜雪鴉が宝剣を隠していた)洞窟で荒れる嘯狂狷に、凜雪鴉は「そんなことで絶望しちゃだめだよ! まだきっと打つ手はあるよ!(でもやっぱりそんなものはなくて、ガッカリ屈辱顔を見せてね)」いう感じで、助言のふりをしつつトドメを刺しにかかるのですが……
 しかしここで嘯狂狷が態度を一変させます。これまでの慇懃無礼な態度をかなぐり捨てて、微妙に正体が露見した弁天小僧チックに開き直る嘯狂狷の姿に凜雪鴉は愕然。冷徹に悪事を重ねてきたのに、一気に破滅させられて絶望する姿にメシウマしようと思っていた相手が、豈図らんや、悪の矜持など欠片も持たない小物中の小物だったとは! 自分を陥れた奴の勝手な愉しみを粉砕したとも知らず、自分の明日からの身の振り方を算段する嘯狂狷に、凜雪鴉は怒り心頭で――しかしもちろん自分で手を下すなどはできず――去っていくのでした。

 さて、前回七殺天凌ラブが極まるあまり、彼女が嫌がる神誨魔械を滅ぼすべく、仙鎮城に殴り込んだ婁震戒は、城の護印師を皆殺しにし、城にあった神誨魔械を全て破壊。しかし最も強力な三本の宝刀は、先に逃れた伯陽候が持ち去っていた模様で、もうここには用はないと一人と一本は城を離れるのですが――その前に立ち塞がるはやはり一人と一本、言うまでもなく、浪巫謠と聆牙です。
 以前、蠍瓔珞が手にした七殺天凌をあと一歩まで追い詰め、そして諦空=婁震戒の危険性をただ一人見抜いて処断しようとした浪巫謠は、言うなれば七殺天凌にも婁震戒にも因縁の相手。といっても婁震戒が警戒などするはずなく、七殺天凌を手に襲いかかるのですが――もちろん浪巫謠は、再び自らの視覚を封じて立ち向かいます。

 視覚を封じてというのは、前回も祐清か碧樞のどっちだったかがやっていましたが、しかし浪巫謠の場合が決定的に異なるのは、彼には視覚に勝るとも劣らぬ聴覚があることと、何よりも滅茶苦茶に武術の腕が立つことであります。魅了は効かず、近づけば剣となった吟雷聆牙の斬撃が、離れれば琵琶に戻った聆牙の音撃が襲いかかる――遠近に隙なし、これは七殺天凌にとっては最悪の相手かもしれません。
 が、その七殺天凌を手にするのも達人の婁震戒。攻撃を躱しながら密かに石を拾い集めた彼は、宙に飛んで逃れた時にその石を放ち、足音と思わせておいて上から襲いかかるという(冷静に考えれば結構地味な)策で反撃! ああ、浪巫謠もこれで退場か――ということはなく、辛うじて肩を斬られただけですんだものの、しかし七殺天凌は小さな傷でも容赦なく体力を奪う魔力を持ち主。もはや浪巫謠の命運は極まったか……

 と、その時自分目掛けて飛んでくる物体を思わず婁震戒が手で受け止めてみれば、それは魑翼の骨笛――召喚された魑翼に捕まり、一人と一本は天空高くに追放されてしまうのでした(まあ、魑翼が力尽きたら戻ってきてしまうわけですが……)。さてその救いの主はやっぱり殤不患かと思えば、それは何と凜雪鴉。玩具であった嘯狂狷に裏切られて(?)機嫌は最悪のようですが、ナイスアシストではあります。
 そしてその原因である嘯狂狷は、大胆にも衙門に殴り込むや、己の手駒とするべく喪月の夜を振るって――と、ますます混沌とした状況ですが、残りはわずか2話であります。


 サブタイトルから、さぞかし立派な悪の矜持を見せて散るかと思いきや、そんなもの持ってないぜ! というスゴい切り返しを見せた嘯狂狷が全て持って行った気がする今回。玩具を失って暇になった凜雪鴉がようやく物語の本筋に絡むのかと思いますが、一筋縄では行かない物語でありキャラクターであるだけに、まだまだ油断できないところです。


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