『どろろ』 第八話「さるの巻」
突如として現れ、村全体を覆う黒雲「残され雲」に苦しめられる村。姉ちゃんと慕う娘・お梅が雲の生贄にされることになった少年・さると出会ったどろろと百鬼丸は、彼とともに雲に立ち向かう。が、雲に「眼」を眩まされた百鬼丸は、雲の正体・大百足に大苦戦し、お梅も奪われることに……
それまで明るかったものが突然暗くなり、天からはなにやらカサカサしたものが落ちてくる村。それを見た人々は、「残され雲だ!」「嫁を用意しろ!」と叫び惑うことに――という、土俗的な時代ホラー色濃厚なアバンで始まった今回。そうとは知らずいつもの調子で旅を続けるどろろと百鬼丸は、硫黄の臭いも強い山中にやってくるのですが――そこで輿に乗せられて行く花嫁の一行と、それに矢を向ける獣の皮を被った少年を目撃、慌てて少年を止めることになります。
しかし「さる」と呼ばれるその少年の話を聞いてみれば、彼が姉ちゃんと呼ぶ花嫁姿の娘・お梅は残され雲への生贄にされるというではありませんか。そして初めて眼下の村のみを覆う雲の存在を知る二人。これは妖怪の仕業に違いないと、どろろは(金目当てで)妖怪退治を持ちかけるのでした。
見張りを殴り倒し、生贄の座に据えられたお梅を連れだそうとするさるとどろろ。しかし彼女がそれを拒んでいるうちに、頭上からはあの雲が……。慌てふためく見張りを吸い込み、空からその残骸を降らす雲。中から現れたのは、空を舞う巨大な百足であります。
ここで百鬼丸の出番、と思いきや、妖怪の一部らしい雲によって一面視界が真っ赤になってしまった彼は、生まれて初めて視界を奪われ、戦闘不能状態に。その間にお梅は百足に呑まれるのですが――しかしその時間欠泉が噴き上がり、雲を吹き飛ばしたおかげで、百足は逃げ出し、どろろたちは命拾いしたのでした。
結局、お梅を失ってしまったさる。しかし彼は大言壮語したどろろを咎めるでもなく、姉ちゃんと呼ぶお梅は実の姉ではなく、山でただ一人生きてきた自分に彼女だけが優しくしてくれたこと、自分にとって母ちゃんのような存在でもあったことを語ります。母ちゃんという言葉には弱いどろろは、さるとともに大百足に挑むことを誓うのですが――その間、百鬼丸は地べたに座り込んで、岩に小石を投げるばかり……
そして翌日、花嫁に扮して百足を誘き寄せるどろろ。相手の攻撃を必死に躱しながらどろろが向かった先は、さるが待ち受ける谷――地面からガスが噴出しているそこに百足が入った時、さるが火矢を放ち、大爆発! と思いきや、百足は脱皮をしてこれまで以上に強力になってしまうのでした(冒頭で空から降ってきたのは百足の皮だった、と厭な展開)。
絶体絶命のその時に、百足の頭に小石を、ついでさるの弓矢を放つ百鬼丸。当然相手にダメージを与えるはずもありませんが、次の瞬間、猛然と飛びかかった百鬼丸は、腕の刃で百足の片目を潰すのでした。昨日の晩、しきりに小石を投げていた百鬼丸――彼は、視覚を封じられた自分に残された聴覚を使い、相手に石や矢がぶつかる音から、相手の位置を割り出していたのであります。
それを知ったどろろは、勇敢にも百足のもう片目の脇に飛び移り、声で位置を知らせようとするのですが――百足が暴れ回る中であえなく失神。しかし戦いの中、言葉にならない百鬼丸の叫びが、どろろの目を覚まします。どろろの声に誘導され、今度こそもう片目を潰した百鬼丸。そこに反対側にもついていた頭が襲いかかりますが――敢えて口の中に飛び込んだ彼は中から百足を真っ二つ、見事に百足を滅ぼすのでした。
空中から下の湖に落ちたどろろと百鬼丸。そして辛うじて生きていたお梅。再会を喜ぶさるとお梅ですが、その時百鬼丸の鼻が落ちて――そう、百足も鬼神だったのです。そして二人と別れ、慣れぬ臭いに戸惑いながら道を行く百鬼丸と相変わらずなどろろ。その彼の口からは、たどたどしくもはっきりと「どろろ」という言葉が……
「残され雲」というネーミングといい現象といい、冒頭にも書いた通り実に時代ホラー感が強かった今回の敵。その一方でドラマはさるの方に持って行かれた感があり、どろろと百鬼丸は今一つ目立たなかった印象があります。正直なところ今回も前回同様に鬼神は登場しないかと思ったのですが――鼻が返ってきたのはむしろ意外でした。
しかしこれは完全に好みの問題ですが、百鬼丸がどろろの名を呼ぶのは、百足の上で失神したどろろに叫んでいる時の方が盛り上がったのではないかしら……
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