「コミック乱ツインズ」2019年4月号
一号間が開いてしまいましたが、「コミック乱ツインズ」4月号の紹介であります。今月の表紙はどどんと大きな海老天が目印の『そば屋幻庵』、巻頭カラーは『宗桂 飛翔の譜』。今回も、印象に残った作品を一つずつ紹介いたします。
『土忍記 砂塵と血風』(小島剛夕)
小島剛夕の名作を再録する「名作復活特別企画」第八回は、前号にも掲載された『土忍記』シリーズの一編。刺客に追われながら諸国をさすらう抜け忍たちの姿を描く短編集であります。
風と砂塵の中、とある村にやってきた旅の侍・平八。破落戸に襲われていた土地の豪農の娘・八重を助けた平八は、請われて彼女の屋敷に滞在することになります。
父を亡くした後、隣の土地の郷士に嫌がらせを受け続けている八重と土地の者を助けるため、荒れ果てた地の開墾を始める平八。八重に慕われる平八に、彼女に仕える青年・助次郎は敵意を燃やすのですが……
流れ者が苦しむ弱者を救い、また去って行くという定型に忠実な本作。タイトルのとおり、アクションシーンのバックに吹いている風の激しさ、厳しさが印象に残る物語であります。
が、内容的にはちょっと驚くくらいストレートで、実はこちらの方が抜け忍なのでは――と思った方が本当にただの人間だったのはちょっと吃驚。いや、こちらが勝手に深読みしただけなのですが……
『カムヤライド』(久正人)
今号から新章突入の本作、国津神を覚醒させる男・ウズメと対決したものの傷を負わされ、取り逃がしてしまったモンコとヤマトタケルは難波を訪れることになります。
折しも湊には百済からの交易船が到着し、ヤマトの精鋭部隊・黒盾隊が警備を行っていたのですが――そこに出現したのは毒霧と強靱なハサミを操る国津神。さしもの黒盾隊も苦戦する中、現れた彼らのお頭の力とは……
というわけで、いきなり登場したごっつい連中・黒盾隊。その名の通り、巨大な盾を用いたアクションがユニークなチームなのですが――しかしそんな彼らでも国津神には敵わない、という時に現れた彼らの隊長は、腹筋シックスパックの女傑、その名はオトタチバナ……!!!
いつかは登場するだろうと思っていた人物ですが、あまりに意外なビジュアルに驚いていれば、ラストにはさらなる驚きが。「魂遷(ダウン)」なるかけ声の下に巨大な盾の中から現れたその姿は、メタルヒーロー……?(何となく女バトルコップを連想)
ついに登場した第二の変身能力者。ヤマトに属する彼女は味方なのか、そして一体何者なのか――大いに気になるヒキであります。
(ただし、絵はちょっと荒れ気味だった印象が……)
『用心棒稼業』(やまさき拓味)
前号から続くエピソード「雲助の楽」の後編である今回、とある宿場の雲助・楽と出会った用心棒三人組とみかんですが、楽は自分の息子とその嫁、お腹の子供を面白半分に殺した大名を殺すために雲助となった男だったのです。
その楽の想いに共鳴し、命を捨てて大名行列を襲おうとする雲助たち、そして彼らに雇われた三人組――というわけで、この後編で描かれるのは、楽と雲助たちの復讐戦の有様であります。
いかに雲助たちが多数とはいえ、相手は鉄砲隊も備えて完全武装した、いわば軍隊。三人組の助太刀があったとしても、普通であれば到底敵うはずもないのですが――しかし降りしきる雪の中、文字通り決死の覚悟で襲いかかる楽と雲助たちの姿は壮絶の一言、さしもの三人組も一歩譲った感があります。
そしてその復讐戦の中心はいうまでもなく楽――普段は実に「いい」顔つきの中年男性である彼が、鎌一丁片手に大名行列に阿修羅の如く突っ込む様はただただ凄まじく、クライマックスの5ページ余りは、自分が何を見ているのかわからなくなるほどのドドドド迫力でありました。
雷音のしみじみとした述懐もどこか空々しく聞こえる、ただただ凄まじい、怒濤の如き回でありました。
さて、次号からは『勘定吟味役異聞』が再開。これは以前からの予定通りですが、「コミック乱」の方で連載されていた『いちげき』が移籍というのはちょっと吃驚であります。
「コミック乱ツインズ」2019年4月号(リイド社) Amazon
関連記事
「コミック乱ツインズ」2019年1月号(その一)
「コミック乱ツインズ」2019年1月号(その二)
「コミック乱ツインズ」2019年2月号
| 固定リンク