« 冬目景『黒鉄・改 KUROGANE-KAI』第2巻 裏切りと罠と家庭の事情と 巻き込まれ続ける迅鉄の旅 | トップページ | 『どろろ』 第十六話「しらぬいの巻」 »

2019.04.29

『鬼滅の刃』 第四話「最終選別」

 鱗滝に送り出され、最終選別が行われる藤襲山に向かう炭治郎。鬼たちが幽閉されている山で七日間生き延びるという試験に挑む炭治郎は、早速自分の技が鬼に通じることを確かめるが、さらに無数の手を持つ巨大な鬼と遭遇することになる。鱗滝に恨みを持つ鬼は、錆兎と真菰を喰ったと語る……

 前回大岩を真っ二つにしたことで、鱗滝から認められた炭治郎。岩を斬れると思っていなかったと何気なく酷いことをいう鱗滝ですが、儂がしてやれるのはここまでと、炭治郎に心づくしの具だくさんの鍋と魚を振る舞う姿には、心から炭治郎を案じていることが窺えます。修行中は粗食だったのか、その鍋をご馳走だと嬉しそうにがっつく炭治郎ですが、食べれば食べるだけ力になる成長期の炭治郎を見ながら、鬼も人を食えば食うほど強くなり、様々な術を操るようになると語る鱗滝さんは何気にデリカシーがないと思います。
 そして炭治郎に呪いの――いや厄除の狐面を与える鱗滝。さらに自分とお揃いの羽織を着せてやり、炭治郎を送り出すのですが――別れ際に炭治郎が錆兎と真菰のことを口にするのにギョッとする鱗滝なのでした(一緒の山にいて気付いてなかったのか……)

 さて、無数の非常に美しい藤の花が狂い咲く、その名も藤襲山にやってきた炭治郎。そこには、茫洋とした雰囲気の美少女やら目つきが異常に険しいモヒカンとか、頬っぺたを晴らした金髪やら、いかにも一癖も二癖もありそうな少年少女が集まっております。
 そしてそこに現れたのは、揃いの着物を着た瓜二つの――髪の色のみが白と黒で異なるだけの――二人の子供。彼/彼女は、弱点である藤の花で鬼を閉じ込めたこの山で、七日間サバイバルすることが鬼殺隊入隊のための最終選別であることを告げるのでした。

 まずは最初の晩を生き延びるため、最も早く陽が当たる東側(そういうものか……?)を目指す炭治郎ですが、しかし早速二匹の鬼に遭遇。これは俺の獲物だと争いながら同時に襲ってくる鬼たちを迎え撃つ炭治郎は、初お目見えの水の呼吸の太刀一閃――鱗滝に渡された日輪刀の一撃は、鬼を一瞬のうちに塵に変えるのでした。
 が、己の修行の成果を確認したのも束の間、凄まじい悪臭とともに現れたのは、人間の倍以上の巨体から無数の腕を生やした異形の鬼であります。既に一人犠牲になり、もう一人があわやというところに駆けつけた炭治郎は、鬼の腕の何本かを切り落とすのですが――鬼の方は、炭治郎が身に着けた厄除の面に見覚えがある様子であります。

 実はこの鬼こそは、今を去ること47年前の慶応年間(ということは本作の舞台は大正のごく初期か)に鱗滝に捕らえられた鬼。本来であれば小物の鬼しか入れられず、しかも選別の中で倒される鬼も少なくないだろうこの山で、桁外れの長寿――というよりどう考えても鬼殺隊の不手際としか思えない存在です。
 が、最大の問題は、この鬼が50人は選別に来た子供たちを喰っていることであり――そして何よりも、そのうちの実に14人が鱗滝門下であることであります。さらに頼まれもしないのに、特に印象に残っているのは、宍色の髪の少年と花柄の着物の少女――錆兎と真菰だと言い出す鬼。厄除の面こそが鬼にとっての目印であったというのは皮肉どころではない大問題――というのはさておき、その言葉に炭治郎が怒らぬはずはありません。

 が――怒りに冷静さを欠いた炭治郎は鬼の腕の攻撃をもろにくらって一瞬失神。さらに鬼の手が襲いかかる中、幻なのか亡魂か、死んだ弟の呼びかけで意識を取り戻した炭治郎は、辛うじてこれを躱すことに成功します。そして反撃を開始した炭治郎は、土の中から奇襲をかけてきた腕もジャンプ一番躱すと、文字通り手を尽くしてしまった肉薄。しかし首の周りに幾重にも腕を巻き付けた鬼のガードは、かつて錆兎すら刀を折られた鉄壁なのですが――しかし炭治郎の全集中はその隙を見抜き、壱ノ型 水面斬りが鬼の首を切り裂くのでした。


 原作の第6話・第7話をベースとした今回は、これまで同様に基本的に原作に忠実な内容ながら、諸所にオリジナル――というより原作を補完する要素が描かれた回。その最たるものが冒頭の炭治郎に鍋を振る舞う鱗滝で、その後の揃いの羽織を用意してやるのも合わせて、彼の優しさが窺われる場面であります。
 また、今回初めて本格的に描かれた(炭治郎の)水の呼吸の太刀も、波のエフェクトを絡めた刀の動きが美しく、なるほど動くとこうなるのか、と改めて感心。これは今回のアクションシーン全般に言えることですが、原作初期の比較的書き込みの薄い時期を、きっちりと映像として補完してくれたという印象があり、これまでで最も見応えのあった回だと、素直に思います。

(ちなみに手鬼が喰った鱗滝の弟子の数を勘定するシーン、原作だとそこまで妙には見えないのですが、アニメだとわけのわからない指の出し方をしていて、それがまた逆に異常性が出ていて感心いたしました)



『鬼滅の刃』第1巻(アニプレックス Blu-rayソフト) Amazon
【Amazon.co.jp限定】鬼滅の刃 1(メーカー特典:「キャラクターデザイン・松島晃描き下ろし色紙」付)(1~6巻購入特典:「描き下ろし1~6巻収納BOX」&「描き下ろしブックカバー(コミックサイズ)+B2布ポスター」引換シリアルコード付)(完全生産限定版) [Blu-ray]


関連記事
 『鬼滅の刃』 第一話「残酷」
 『鬼滅の刃』 第二話「育手 鱗滝左近次」
 『鬼滅の刃』 第三話『錆兎と真菰』

 吾峠呼世晴『鬼滅の刃』第1巻 残酷に挑む少年の刃

関連サイト
 公式サイト

|

« 冬目景『黒鉄・改 KUROGANE-KAI』第2巻 裏切りと罠と家庭の事情と 巻き込まれ続ける迅鉄の旅 | トップページ | 『どろろ』 第十六話「しらぬいの巻」 »