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2019.04.18

『鬼滅の刃』 第二話「育手 鱗滝左近次」

 義勇の言葉に従い、狭霧山の鱗滝左近次のもとに向かう炭治郎と禰豆子。途中鬼に遭遇してしまった炭治郎は、間一髪のところを禰豆子に助けられただ、鬼に止めを刺すことを躊躇う彼の前に鱗滝が現れる。炭治郎に厳しい態度を見せる鱗滝は、弟子入りを志願する炭治郎に一つの試練を課すが……

 家族は殺され、唯一残った妹は鬼にされ――といきなりの運命の変転に戸惑う炭治郎は、その妹を連れて唯一の頼りとも言える鱗滝を尋ねて狭霧山へ――という悲壮極まりない状況ですが、壊れた籠だからタダでいいと言う相手に無理にお金を払おうとする炭治郎の頭の固さは、完全にギャグとなっております(ある意味伏線ですが、しかしこういうギャグは声がつくと妙に浮きますね)。
 そしてもらった籠を修繕して、そこに小さく変化した禰豆子を入れ(そのままのサイズでは籠からはみ出す彼女を見て、「大きくなったなあ」と感慨にふける炭治郎は大物というかなんというか……)昼夜を問わず急ぐ炭治郎ですが――夜の山中で血の臭いを嗅いだ彼が途中のお堂に駆けつけてみれば、中には無惨な死体の数々と、それを喰らう鬼(何故か声は緑川光)の姿が!

 まさしく地獄絵図を前にした炭治郎が愕然とする一方で、新鮮な血肉を前に涎をダラダラと垂らす禰豆子。そしてそんな炭治郎に襲いかかる鬼――と、なんとか斧で首に切りつけた炭治郎ですが、浅い上に鬼の生命力はあっさりと傷口を塞いでしまいます。そしてそのまま鬼にのしかかられて炭治郎大ピンチ――と、そこで兄のために本能に打ち克った禰豆子のサッカーボールキックが直撃、鬼の頭は吹っ飛ぶのでした。
 ……が、それでも動き出す鬼の体に、今度は禰豆子が吹っ飛ばされ、頭だけになった鬼が炭治郎に襲いかかります。頭から手を生やすという奇怪な鬼に斧を掴まれ、苦戦する炭治郎ですが、頭の固さを生かして至近距離から頭突きを連発! 斧を木に打ち込んで動きを止め、鬼の体も崖下に突き落として、何とか窮地を脱するのでした。

 しかしそれでもまだ生きている首の部分。何とか止めを刺さなくては――と考える炭治郎ですが、首だけの相手を完全に殺すというのは、昨日まで常人だった彼には高すぎるハードルであります。そんな中、後ろから渋い声(格好良い時の大塚芳忠)が……。全く足音をさせぬ相手に驚いて振り返れば、それは天狗面にほっかむりというさらに驚く外見。彼こそが炭治郎の探し求めていた鱗滝左近次であります。
 そんなこんなのうちに日が昇り、太陽の光の前に鬼は塵と化すのですが――それまで何もできなかった炭治郎に対し、判断が遅いと指弾する鱗滝。妹が人を喰ったらどうすると問われて答えられない炭治郎に容赦なく平手打ちを食らわせ、その時は妹を殺して腹を切れという突き放しっぷりに炭治郎も愕然であります。が、それでも彼に頼るしかない炭治郎は、走る鱗滝に必死について、ようやく狭霧山に辿り着くのでした。

 が、弟子入りのための試験はこれから――山頂まで連れて行かれ、ただ一人で夜が明けるまでに下りてこいと、夜の山に置いていかれる炭治郎。楽勝と思ったのは初めのうちだけで、容赦なく襲いかかるトラップの数々に、いかに鼻が利く炭治郎でも、無機物相手には勝手が違って大苦戦。しかも空気が薄い山に大いに苦しめられる炭治郎ですが、それでも何とか微妙な匂いの違いを嗅ぎ分けて、夜のうちに鱗滝のもとに帰り着くのでした。
 鬼に対しても情けを見せる炭治郎を甘いと感じたものの、根性で食らいついてきた彼の弟子入りを認めた鱗滝。その脳裏には、いきなり炭治郎を押しつけてきた義勇の手紙が浮かぶのでありました。


 と、義勇の手紙が読まれるのがラストである以外は、ほとんど全く原作第2、3話のままだった今回。しかし原作ではかなりサラッと描かれていた、人間の死体を前に涎を垂らす禰豆子の姿を、かなりねっちりと描いていたのはなかなか良かったかと思います。
 それ以外は、正直なところ特に印象に残る場面は少なかったのですが……(単調なBGMの使い方など、いまいちな点は印象に残りましたが)

 それにしても今回改めて振り返ってみれば、実質最初の鬼の時点で、首を斬っても死なないという、鬼の最大の弱点を潰してきているというかなりトリッキーな相手が出ていたのだなあ、と感心いたします。(ちょうど今、原作の方で首を斬られたアイツの首がこうなっていたら、と想像してしまって妙におかしい)

 にしても、住んでいる山の隣で鬼が縄張り作ってる鱗滝さんは色々とマズいのでは。(この先描かれる最終選別絡みの展開といい……)



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