吾峠呼世晴『鬼滅の刃』第15巻 二つの勝利の鍵、そして柱稽古開幕!
いよいよアニメも放送開始となった『鬼滅の刃』。この第15巻では、刀鍛治の里編がついに完結し、みんな大好き柱稽古がスタートいたします。その中で次々と明らかになっていく秘密と人間模様。その中で炭治郎は……
刀鍛治の里を襲撃した上弦の伍・玉壺と上弦の肆・半天狗を迎え撃つこととなった炭治郎・玄弥・禰豆子・無一郎、そして蜜璃。
数多くの犠牲を出しながらも、ついに自分の過去を思い出して覚醒した無一郎は玉壺に圧勝するのですが――しかし残る半天狗は新たな分身・憎珀天を生み出し、炭治郎たちは苦戦を強いられることになります。蜜璃が憎珀天を抑える間、炭治郎たちは半天狗の本体を追うのですが……
というわけで、半天狗との決着から始まるこの第15巻。嫌になるほど分身を生み出して逃げ回る半天狗を追う中、夜明けが近づいてくるのですが――鬼の最大の弱点である太陽の光は、禰豆子にとっても弱点であります。
敵味方にタイムリミットが迫る中、救う命の選択を迫られた炭治郎。しかしそれが思わぬ結果を生むことになるのです。
かくて、一つの戦いが終わった以上のものを敵味方にもたらしたこの戦い。鬼殺隊側には覚醒の証ともいうべき「痣」の存在を、そして無惨にとっては、千年の悲願である太陽を克服した鬼という存在を――と。
二つの勢力にとって、それぞれに勝利の鍵となるべき存在の情報を手にしたことにより、いよいよ決戦の機運が――高まるのは、しかしもう少し先で、ここからこの巻の2/3程度を費やして描かれるのは、決戦に向かって鬼殺隊が繰り広げる特訓――柱稽古の様であります。
柱稽古、それは柱たち六人がコーチ――というにはあまりに強烈な壁となって立ち塞がり、平隊士たちを鍛えるという一大特訓イベント。引退した音柱もこの時だけ復帰して、総勢六人の柱が――六人?
炎柱は死亡、蟲柱はお館様の別命があるとして、水柱・冨岡義勇は――何だかよくわからない理屈で参加拒否。そんな義勇を引っ張り出すために向かった炭治郎に対して、義勇は「水柱が不在の今」「俺は水柱じゃない」と、衝撃の発言を……
いやはや、寡黙でクールで頼りになる先輩(cv:櫻井孝宏)のようでいて実は天然、というのが個性であった義勇。しかしこれではまるでちょっと危ない人のようではありませんか。
しかしもちろん、この言葉には彼なりの理由が、そして彼なりの想いがあります。そう、ここで描かれるのは、これまで寡黙すぎてわからなかった不器用な男・冨岡義勇の真実なのであります。
そしてその真実とは――なるほど、ここでこう繋がるか! と、物語を冒頭から読んでいれば唸らされるほかないもの。極端なほどの振れ幅の大きさを生かして描いてみせる、本作ならではのキャラクターの掘り下げをここでもまた見せていただきました。
そんなこんなでようやく始まった炭治郎の柱稽古ですが――これが読者にとっては実に楽しい。いや、修行を楽しいと言ってしまうのも申し訳ないのですが、ただでさえ一癖も二癖もある柱たちの個性が、これでもかと飛び出してくるのですからたまりません。
本作においては鬼たちとの戦いと戦いの合間に、治療と修行のエピソードが描かれるのが定番。鬼との戦いが全く洒落にならないシビアでハードなものである一方で、修行フェーズの方は適度に、いやかなりコミカルに描かれているという、その落差もまた魅力であります。
今回はその落差が、柱たちが絡むことでより強烈になっているのですが――しかしもちろん、ここで描かれるものが、楽しいものだけでは終わらないこともまた事実。
風柱・不死川実弥とその弟・玄弥――その壮絶な過去は、以前玄弥を通して描かれましたが、そこで生じた二人の溝は、今もなお深く深く存在していることが、今回示されることになります。
義勇のように、この二人が過去を乗り越えることができるのか――それがわかるのはまだ先のようですが、二人の関係性は、この先大いに注目すべきものであるのは間違いないでしょう。
そして表紙を飾った岩柱・悲鳴嶼行冥が登場、というより出現といった方がいいようなインパクトでもって、この巻は終わるのですが――さて、柱の中でも最も得体の知れない彼がどのように描かれるのか、楽しみは続く柱稽古であります。
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