『鬼滅の刃』 第一話「残酷」
山で母と妹・弟たちと暮らす少年・炭治郎は、町に炭を売りに行って帰ってきた時、家族が何者かに皆殺しにされたことを知る。唯一息があった禰豆子を背負って山を下りようとする炭治郎だが、突如禰豆子が凶暴化して襲いかかる。その時、鬼の首を斬るのが仕事だという青年・冨岡義勇が現れるが……
ついにスタートしたアニメ版『鬼滅の刃』。第5話までを再編集して劇場公開されるなど面白い試みも為されている本作ですが、この第1話は驚くほど原作の第1話に忠実な内容。
台詞回しなど、原作をそのまま使っているのではないか――というくらいで、ビジュアル的にもパッと見で異なるのは、炭治郎の婆ちゃんのビジュアルが出たのと、町にやたらと電信柱と電線が多かった程度では、という印象であります。
父亡き後、母と5人の妹弟を炭焼きで養っていた炭治郎。雪が降る中、ただ一人炭を背負って山を下りた彼は、その帰りに町外れに住む知人のもとに泊まり、そこで夜徘徊する人喰い鬼と、鬼を斬る鬼狩り様の言い伝えを聞くことになります。
その時は全く本気にしなかったものの、家に帰った時、家族が全員血の海に沈んでいたのを目の当たりにして愕然とする炭治郎。幼い弟を庇う形で倒れていた禰豆子のみ、体にぬくもりがあったことから、彼女を背負い医者のもとに向かう炭治郎ですが――しかし突然獣のような声を上げた禰豆子は炭治郎に襲いかかるのでした。
体まで巨大化していく禰豆子に追い詰められながらも、懸命に呼びかける炭治郎の声を耳にして、禰豆子も涙を流すのですが――そこに突如現れ、手の刃を振るったのは、詰め襟に半半羽織の青年・冨岡義勇。易々と禰豆子を捕らえ押さえつけた義勇は、人喰い鬼の生態と、一度鬼になれば人間には戻らないことを冷然と告げると、刃を振り上げるのですが……
土下座して妹を殺さないよう懇願する炭治郎に、「生殺与奪の権を他人に握らせるな!!」と、声を荒げて微妙にわかったようなわからないようなことを言いながら叱咤する義勇。炭治郎を絶望から奮い立たせるため、敢えて憎まれ役を買って出たらしいけれどもわかりにくいところが、実にこの人らしい――と、原作読者としては感じてしまうところであります。
しかしそこで期待とは別のところで奮い立った炭治郎は、林に身を隠しながら石を投げつつ、手斧を振りかぶって襲いかかるという炭焼き殺法で反撃。もちろんそれが通じるはずもないのですが――炭治郎が注意を逸らしながら手斧を頭上に投げて相討ちを狙っていたことを知り、そして禰豆子が倒れた炭治郎を庇うのを見た義勇は、何か通常と異なるものを感じ取り、炭治郎に鱗滝左近次なる老人を訪ねろと告げると、姿を消すのでした。
家族を弔った炭治郎は、鬼から戻ったものの茫洋とした状態の禰豆子の手を引いて、山を下りることに……
冒頭に述べたとおり、本当に原作ほとんどそのままの台詞回しだった今回は、それ故に――というべきか、異常に炭治郎(と義勇)のモノローグが多かった印象があります。
もちろんそれは原作に由来するものなので仕方ないと言えば言えるのですが――原作ではそうでもなかったそれが、今回何だか非常に耳についてしまうのは、言うまでもなく「声」がついたからでしょう。
これはもう個人の趣味であることは間違いありませんが、個人的にはモノローグが多いアニメはあまりピンとこない――本来であればそれ以外のもので置き換えることができるのではないか、と感じるので――ため、この先も続く炭治郎のモノローグが同様に処理されるのであれば、ちょっと困ってしまうなあ、と思ってしまうのでした。
にしても原作の方では、ちょうど発売されたばかりの第15巻でその内面が描かれた義勇さん。それを知った上で見てみると、頑張って喋ったなあとか、独断で禰豆子を見逃したのはやはり無茶だなあとか(彼の過去を踏まえると実は猛烈に尊い判断なのですが)、何だか微笑ましくなってしまうのでした。
いや、面白がってはいけないのですが……
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