『鬼滅の刃』 第三話『錆兎と真菰』
鱗滝の下で鬼殺隊入隊のための修行を始める炭治郎。厳しい修行の末、もう教えることはないと鱗滝は告げ、巨大な岩を刀で斬るよう命じる。岩を斬れず悩む炭治郎だが、その前に、狐面をつけた少年・錆兎と不思議な少女・真菰が現れる。二人との修行の末、ついに炭治郎と錆兎、最後の対決の日が……
冒頭、鱗滝の声で説明される鬼殺隊の存在と鬼の生態(柱たちがシルエットになっているのは格好良いのですが、漫画の方ではそれなりに目立っていたのにかえって目立たなくなったしのぶと小芭内)。
冷静に考えると作中で鬼殺隊の内容がしっかりと説明されるのはここが初めてなのですが、鱗滝の声で、鬼殺隊を率いる者も、鬼を創り出した者も不明と語るのはちょっと違和感が……
それはさておき、日記をつける炭治郎のモノローグという態で展開していく今回。山下りや刀の素振りといった地道な基礎訓練から、鱗滝による稽古、呼吸法と型の指導、さらには「水」の剣士らしく、水に一体になるための滝行――と、最後の描写はアニメオリジナル。水と一つになるのだ、と滝壺に叩き落とされ、滝に打たれる――とかなり無茶な修行であります。
そして修行開始から瞬く間に時間は過ぎて一年後、もう教えることはない、と言い出す鱗滝。もちろんこれで免許皆伝ではなく、あとは実践、とばかりに鱗滝が炭治郎を連れていったのは、古びた注連縄がかけられた、二抱えはありそうな巨大な岩――この岩を斬れたならば、鬼殺隊士への最終選別に行くのを許可するというのであります。
何だかこれを斬ったら悪いものの封印が解けそうで心配――というのはどうでもいいとして、岩なんて斬れるわけがないし刀が折れる、三十七歳児が殺しにやってくる(のはまだ先)という炭治郎の困惑をよそに、鱗滝は一切指導をすることなく、炭治郎は独力で岩に挑んだものの、虚しく半年が過ぎるのでした。
それでも全く岩は斬れず、自分を奮い立たせるためにガンガン頭を岩に叩きつける炭治郎の前に、うるさい! と非常にもっともなツッコミとともにあらわれたのは、口元から右頬にかけて傷のついた狐面を被った宍色(黄色がかった赤)の髪を持った少年・錆兎であります。
鼻でも匂いを感じ取れず、突如として現れた錆兎に驚く炭治郎ですが、「男なら」「男に生まれたなら」と、やたらと「男」を連呼する錆兎はいきなり木刀で斬りかかってくるのでさらに困惑。自分は真剣を持っているのに――と躊躇う炭治郎を一笑に付す錆兎は、木刀でもって炭治郎を圧倒、凄まじい打上げで炭治郎の顎を痛打してKOするのでした。
そして意識を取り戻した炭治郎の前に現れたのは、狐面を横被りした少女・真菰。堅物の炭治郎が頬を赤らめるほどの可愛らしい真菰が語る内容は、炭治郎の動きや呼吸法に対する指摘であります。実践、いや実戦第一の錆兎と、言葉で適切な指示を与える真菰(しかし全集中の呼吸の説明で、結局死ぬほど鍛えるしかない、というあたりは実にアバウト――いや、結局真実だったのですが)の指導を受け、また半年が過ぎることに……
しかしその中で腕を上げ、ついに真剣を抜いた錆兎と対峙した炭治郎。二人の勝負は一瞬、炭治郎の刃が真っ正面から錆兎の面を打ち、狐面を斬り――そしてなんとも言えぬ笑みとともに錆兎は、そして真菰は消え、そこに残ったのは真っ二つとなった岩だったのでした。
原作の第4話・第5話を、またもや非常に忠実にアニメ化した今回。しかし細かい修行のディテールはかなり補われていた印象(しかし型の指導、鱗滝さんが何も教えてないのに適当にやらせているように見えてしまう……)ですし、上で述べたように、アニメオリジナルの修行として「水」の流派らしいものが加わっていたのも面白いところであります。
そして今回のタイトルロールである錆兎と真菰ですが――特に印象に残ったのは錆兎の存在感。原作では炭治郎と比較的年齢が近い印象だったのですが、こちらでは完全に彼よりも上に感じられたのは、これはもう演じた梶裕貴の力によるものではないかと思います。
しかし冒頭で述べたように日記形式であったから仕方ないとはいえ、錆兎が最後に浮かべた笑顔は、まさにそのものの表情が描けていただけに、言葉での説明は要らなかったのではないかなあ――とは思います。
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