『鬼滅の刃』 第七話「鬼舞辻無慘」
三体の沼の鬼のうち、一体を禰豆子に任せて自ら沼に飛び込み、二体を倒した炭治郎。残る一体に鬼舞辻無惨のことを問い詰める炭治郎だが、怯える鬼は答えず、刃の前に散るのだった。そして新たな任務で浅草に向かった炭治郎は、そこで家に残っていた匂いを嗅ぐ。鬼舞辻無惨の匂いを……
前回ラスト、箱の中から強烈な蹴りとともに飛び出してきた禰豆子。そのまま冷静に考えたらちょっとマズいアングルで痛烈なかかと落としを放って鬼を牽制、沼からの不意打ちも軽々と避けて、身体能力の高さを見せつけます。
その禰豆子の姿に、和巳とトキエを任せ、自分は攻撃に専念することを決意した炭治郎。自ら沼に呑まれるという思い切った手段に出た彼が飛び込んだのは、犠牲者の遺品が漂うほの暗い水の中。炭治郎は一見不利な水中という環境をもものともせず、襲いかかる鬼(歯ぎしり鬼とたぶん冷静鬼)に対し、「水」の呼吸の利点を生かしたともいえる陸ノ型・ねじれ渦で二匹まとめて粉砕するのでした。
一方、残る一体と戦っていた禰豆子は、その身体能力で鬼を追い詰めるものの、初陣の経験不足が祟って反撃を受けることに――と思いきや、そこに炭治郎が帰還。鬼の犠牲者を辱めるようなクソ発言にブチ切れた炭治郎は、相手の両手を落として拷いや尋問モードで鬼舞辻無惨のことを問い詰めるのですが――その名を聞いた途端、鬼はこれまでの態度が嘘のように鬼は我を忘れて怯え出すのでした。
結局、自棄になったように襲いかかってきた鬼の首を斬って戦いを終えることになった炭治郎。和巳に、俺たちは無様に生き続けるしか無いんですよ(違う……けどまあだいたい合ってる)と声をかけた炭治郎は、激高した和巳の手を握り返すと、哀しくも優しい笑みとともに犠牲者の遺品を託し、去って行くのでした。
――が、そこですぐに次の依頼が舞い込んでくるのが鬼殺隊の恐ろしいところ。鎹鴉の指令で、早速浅草に向かうことになった炭治郎ですが、鬼が潜んでいる噂、というアバウトな指令に行く宛もなく彷徨う炭治郎は、テリブル東京を前にして右往左往するばかり。うどんの屋台を見つけてそこで一息ついた炭治郎は、非常にうまそうな山かけうどんを食べようとするのですが――しかしそこで嗅ぎ憶えのある匂いが!
無情にも器ごとうどんを地面に叩き落とし、禰豆子をもその場に残して突っ走る炭治郎。なぜならその匂いこそは、惨劇の現場に残されていた忘れもしない家族の仇・鬼舞辻無惨の匂いだったのですから……
そして人混みをかき分け、ついに肩に手をかけたその相手は、額に縮れた髪を垂らした小洒落た洋装の伊達男。しかし、その瞳は鬼のそれ――人混みにもかかわらず刀を抜きかけた炭治郎の腕を止めたのは、男が抱いていた小さな少女でありました。そして後ろから現れたのはその母親――夫と呼び父と呼ぶ相手が人喰い鬼の首魁であることも気付かぬ、紛れもなく人間の母親と娘の姿に、炭治郎はショックを受けるほかありません。
そしてその間に、無惨が自分の傍らを歩いていただけの男の首筋に何気ない風で自らの爪を振るうと、男は鬼に変わって……
今回もまた、きっちり原作2話分を消化したこのアニメ版。原作でも、沼の鬼との激闘の後にいきなり浅草に行かされるというのは違和感があったのですが、今回1話の中で描かれることでその印象が強調された気もいたします。
もっとも、相変わらず原作で描かれていない部分、省略されている部分を補う描写は面白く、特に後半の浅草の場面は、当時の浅草の華やかさを様々な形で描いて、文字通り山出しの炭治郎が右往左往する姿をより強調していたのが、楽しいくだりでありました。
(その一方で省かれたのは、最後の沼の鬼を問い詰める炭治郎のホラー顔――精神世界の中の善逸のような顔は、作品初期ならではの描写で、これは忠実に描かなくて正解でしょう)
そして毎回驚くほどゲスト声優が豪華な本作ですが(今回も岩田光央と皆口裕子が……)、鬼舞辻無惨は関俊彦と、実に納得のキャスティング。この声でパワハラされたら、それはいかな鬼畜でも恐縮するほかありませんから……
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