『鬼滅の刃』 第八話「幻惑の血の香り」
浅草の雑踏の中で鬼舞辻無惨と遭遇したものの、無惨が鬼に変えた人間を抑えることを優先した炭治郎。その彼に力を貸したのは、鬼でありながら無惨を敵視する珠世と愈史郎だった。隠れ家で、鬼を人に戻すために炭治郎に協力を依頼する珠世。しかしそこに無惨の命を受けた刺客たちが襲いかかる……
前回ラスト、妻子と一緒にいるところを炭治郎に声をかけられ、すっとぼけながら近くを歩いていた男の首筋を爪で切り裂いた無惨。そこから無惨の血が入り一瞬で鬼化した男は、突然の変貌に呆然とするその妻に襲いかかり――と、阿鼻叫喚の最中、炭治郎は無惨を追うのでも鬼となった男を討つのでもなく、男と妻を引き離し、男が周囲に被害を及ぼそうとするのを止めようとするのでした。
ヒーローとして百点満点の行動ですが、そそくさとその場を立ち去る無惨を煽るのも忘れない炭治郎。地獄の果てまで追いかけて頸を斬るだの何だの、言いたい放題であります(何気に煽り能力が高い炭治郎)。
そんな騒ぎの中でも「この人」に誰も殺させたくないと鬼となった男を抑え続ける炭治郎ですがもう限界、おまけに何も知らない官憲までやってきて、ややこしいことになりかけるのですが――そこで突然炭治郎の周囲を取り巻く美麗な紋様と香り。それを生み出したのは、人に紛れてこの雑踏の中にいた鬼・珠世だったのですが――しかし炭治郎の鼻は、他の鬼とは違うものを感じ取るのでした。
一方、適当なことを言って妻子を車で送り返し、浅草の裏道に入っていく無惨。見るからに怪しい行動ですが、そこで地回りらしい二人+女性とぶつかったのが運の尽きであります(ぶつかった方の)。よせばいいのに顔色が悪いだの死にそうだの、ことごとく無惨の地雷を踏み抜いた酔漢はワンパンで惨死、その兄貴分もキック一発で打ち上げ花火となり――残された女性に追い込みをかける無惨様。関俊彦ならではのドスの効いた甘い声で矢継ぎ早に繰り出される言葉責めに常人が耐えられるはずもなく、さらに女性は無惨の血を過剰に送り込まれ、蔵六の奇病のような姿になり果てて息絶えるのでした。
そんな惨劇を生み出しても表情一つ変えず、指を鳴らして近くに控えていたらしい二人の配下を呼び出す無惨様。その指令はもちろん、炭治郎の抹殺……
と、CM明けにこれはこれで岩田光央の熱演が光るウドン屋のくだりを経て、愈史郎に連れられて珠世のもとに向かう炭治郎。しかし愈史郎は何故か炭治郎に非常に冷たい態度、しかも禰豆子のことを「醜女」呼ばわりしたものだから炭治郎のウザ絡みを呼び、色々な意味で雰囲気は最悪です。そんな騒ぎを繰り広げながらも、見た目は普通の塀をすり抜けた(何気にアニメオリジナル描写)その先にあったのは珠世の屋敷であります。
そこで改めて珠世と対面した炭治郎は、珠世が鬼と化した夫に襲われた妻を治療してくれたこと、彼女と愈史郎は人間の血肉を食わないこと、愈史郎は彼女が鬼にしたこと、そして彼女が実はすごい年齢であることを知るのでした(そして最後のやつを突っ込んで愈史郎に殴られる炭治郎)。そう、彼女は鬼の中でも唯一、自力で無惨の呪いを解き、人間の血を少し飲むだけで生きていける鬼。そして彼女に鬼に変えられた愈史郎も、彼女よりさらに少量の血で生きていけるというのであります。
自分と同じく無惨を敵視する珠世に、鬼を人間に戻す方法はあるか尋ねる炭治郎。その答えは是――しかし現時点ではそれは不可能であり、治療法確立のため、珠世は炭治郎に二つの頼み事をするのでした。一つはやはり特異な鬼である禰豆子の血を調べること、もう一つはできるだけ無惨の血が濃い鬼の血を採取すること。後者は言い換えれば、より強い鬼との戦いを強いることになるのですが――しかし炭治郎には是非もありません。
と、その時、屋敷に飛び込んでくる奇怪な鞠。それは無惨の命を受け、珠世の隠れ家を探し当てたあの無惨の配下の二人組・朱紗丸と矢琶羽の襲撃で……
毎回言っていますがまたもや原作に過ぎるほど忠実だった今回。比較的嵐の前の静けさ的な回ではありますが、珠世の惑血、矢琶羽の奇妙な矢印のビジョンと、血鬼術の描写はなかなか面白いところではありました。
その一方で今回(炭治郎と愈史郎の間で)結構多かったギャグ調のやりとりですが――この辺りは音と動きがつくと妙に気恥ずかしい印象は否めません。原作のギャグは微妙な間の取り方による部分も大きいのですが、その点についてはあまり再現できているとは言い難い――というより原作に忠実にやればいいというものではない――ように思います。
(ある意味アクションシーンよりも再現が難しい部分ではあるのは間違いないのですが)
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